バイトへ向かう途中に 携帯を取り出して画面と睨めっこ
表示されているのは ――――――――――
道明寺 の携帯番号
あかい糸
act.2
さっきから何度も携帯を閉じたり開いたり・・・・
一体あたしは何をしてるんだ?
自分で自分に問いかける
――― 『 何か牧野らしくねーけど? 』 ―――
躊躇しているあたしに さっきの美作さんの言葉が蘇る
そうよ こんなのあたしらしくない
あいつに・・・・・・・本当のことを聞かなくっちゃ
あたしは意を決して 通話のボタンを押す
―――― RRRRR RRRRR RRRRR プッ
でた!!
「あっ! もっもしもし?! どう ――――――――」
聞こえてきたのは 英語の機械的な音声
なんだ留守電・・・・・・か・・
―――――――――― プチ
溜息を吐きながら 電話を切って空を見上げる
この空の先の先・・・・・ずーっと先は あいつのいる N.Y・・・
別に何万光年も離れた宇宙に行っちゃったわけじゃなし
今の時代 飛行機を使えば寝てる間に着くくらいの距離に あいつはいる
電話だって 画面でお互いの顔を見ながら話しができるし
声だけなら こんな小さな機械で歩きながらだってできる時代
なのに ――――――――――
こんなに不安になるのはなぜだろう
パリでの再会から2年 ――――――――――
あいつを・・・信じていないわけじゃない
ただ あいつに直接触れられないという事実
あいつと同じ時間を共有出来ないという事実
あいつの ―――――― 傍にいないという現実
バッグの中から 封筒を取り出す
昨日 ――――――――――
アノヒト から受け取った写真
道明寺と・・・・・アノヒト が 腕を組んでパーティーに出席している証拠
「ふんっ ばかばかしい!」
写真の道明寺に パチンと デコピンを喰らわせる
こんなこと 今までだって何度もあった
ビジネス相手の美人社長と噂になる
あいつがどこかの令嬢をエスコートして 花嫁候補かと話題になる
雑誌に載ることもあれば テレビで流れることだってあった
そんなことには もう慣れっこ
あたしは惑わされない
あたしは 道明寺とあたしの 『 運命の赤い糸 』 を信じてる
―――――――――― はずだったのに
今回 あたしの目の前に
わざわざ写真の張本人がやって来て ――――
そのことに 戸惑いを隠せないあたし
・・・・・・それだけじゃない
ううん・・・それだけと言うよりも むしろ あたしが戸惑う本当の理由・・・・
写真の中の道明寺が ――――――――――
・・・・・笑ってる?
今まで噂になって 流れた出たあいつはの表情は
どれも ”楽しい” とは程遠い顔をしていた。
いつも眉間にシワが寄っていて どっちかと言えば機嫌が悪い顔・・・
だけど今回のこの写真は ――――――
あいつはすごく楽しそうな顔をしていて
アノヒト と向き合って笑っていた
それは
あたしですら 見たことのないような笑顔で・・・
「・・・なんで・・・そんなに笑ってんのよ・・・」
もう一度 パチンと あいつを弾き
写真をバッグにしまい込む
はぁ〜 ・・・・・・・
昨日から 何度目だか分からない溜息を吐いて もう一度空を仰ぐ
空と雲の間に
アノヒト に笑いかける あいつの顔が見えたような気がして
あたしは頭をブンブンッと振りながら バイト先へと急いだ
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