花と歌 その69(杜

我が家のハイビスカスは冬の寒さに耐えられず、とうとう枯れ朽ちてしまった。去年、100以上も花をつけて楽しませてくれたが、花の一生もわからないものだ。 また、今年も、香りを振りまきながら、沢山フリージアが咲いたが、それも終わりかけている。 今は、そばの鉢植えから、にょきにょきと伸びて杜若が綺麗に花を咲かせている。 昨晩からの春嵐の吹く前に、切花にして部屋に飾った。 杜若と言えば、在原業平が”かきつばた”の5文字を57577の頭に入れて詠んだ歌が有名である。 ”からころも きつつなれにし つましあれば  はるばるきぬる たびをしぞおもう”  着慣れた唐衣と少し慣れて親しみが出てきた新妻をかけているのだろう。その妻を都に残しての旅の途中(いまの愛知県三河あたり)、水辺の杜若を見て、はるばる、よく、ここまで旅をしてきたのだろうと、やるせない気持ちを詠んだのだろうか。 業平を広辞苑で調べると、元は桓武天皇に繋がっており、系図からは皇族である。 しかしながら、跡目争いの渦に巻かれ、華やかな貴族社会から離れ、日陰に追いやられてしまった。 平安時代のプレーボーイと有名だが、好きになる女性はいつも、手の届かぬ、高嶺の花だったようで、成就したためしがない。 数ある歌のうちで、”月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして” が好きだ。そんな想いで、我が家に咲いた黄色と紫の杜若を描いてみました。ご笑覧ください。(平成18年5月20日)

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杜若(か き つ ば た)

能”杜若”は在原業平と高嶺の花の二条の妃の高子との悲恋を、美しい杜若の花の精として、表現しているそうだ。 一日、業平になったつもりで、歌つくりにチャレンジしてみた。 花言葉は「幸運、雄弁」