過去推量表現 

 「~だったに違いない」「~だったのだろう」などの表現が難しく感じる人が多いようなので、補足します。

   英語の「must have +過去分詞」や「will have+過去分詞」などを思い浮かべてください。

  ドイツ語では、完了の助動詞としてhabenseinの2つを使い分けないといけないので、それだけがやっかいです   

  が、あとは基本的に英語と同じです。英語の「have +過去分詞」に相当するものが、ドイツ語では「過去分詞+haben

  もしくは「過去分詞+sein」であり、これを「完了不定詞」といいます。この完了不定詞を話法の助動詞(または未

  来の助動詞)のパートナーにすればいいのです。

 

  ともあれ具体的な例を見ましょう。次の3つの例文を見てください。

  1. Er mag schon alt  sein.

        彼はすでに年老いているのかもしれない。(年老いているのだろう。

      2. Er mag schon alt  gewesen sein.

    彼はすでに年老いていたのかもしれない。(年老いていたのだろう。)

      3. Er mochte schon alt  sein.

    彼はすでに年老いているのかもしれなかった。(年老いているらしかった。)

 
 
話法の助動詞mögenの時称は、「推量している時点」をあらわします。つまり「かもしれない」なら現在人称変化をす  

 ればいいし、「かもしれなかった」なら過去人称変化です。

 完了不定詞を使うのは、「推量している時点」と「事柄が生起した時点」との間に、時間的なズレ(段差)がある場合に

 用います。完了不定詞とは時間的な段差を表現するものなんです。例文2では、過去のことを現在の時点で推量してい  

 るから、完了不定詞(gewesen sein)を使うわけです。例文1のように現在のことを現在の時点で推量している場合や、

 例文3のように過去のことを過去の時点で推量している場合は、段差がないですから、完了不定詞は使わないわけです。

 完了不定詞をパートナーに用いた話法の助動詞による過去推量の例文をいくつか挙げておきます。

    1 Sie muss schon ihre Hausaufgaben gemacht haben.

                 彼女はすでに彼女の宿題を終えてしまったに違いない。

   2 Sie muss in ihrer Jugend schön gewesen sein.

            彼女は若い頃は美しかったに違いない。

   3 Auch sein Vater soll an Krebs gestorben sein.

              彼の父親も癌で亡くなったといううわさだ。
 

  話法の助動詞と同様に、未来(推量)の助動詞も使います。

   4  Sie wird gestern ihre Hausaufgaben gemacht haben.

            彼女は昨日彼女の宿題を終えてしまったのだろう。

    この4の例文は、英語のwill have +過去分詞に相当するもので、いわゆる未来完了時称になります。

   純粋な未来完了というのは、未来の時点での完了を意味し、たとえば次の例文のようなものです。

     Bis Sonntag wird er den Roman gelesen haben.

              日曜日までに私はその小説を読み終えてしまっているだろう。

   しかし、現代のドイツ語の未来完了は、例文4のように、「過去のことに対する推量」の用法のほうが、はるかに一般的

   なのです。