「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。」(平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見 首相官邸ホームページ)
「再び延期することがないように○○していきます。」でも「よほどの事態が起こらない限り再延期することはない。」でもなく、はっきりと「断言」したのです。それなのにまた2年半の再延期になりました。
「アベノミクスは失敗しました。そのためにやむなく再延期を決断しました。」というのであれば、再延期の理由としては理解できます。実際にアベノミクスは失敗だという指摘を新聞やテレビでもよく報道されていますし、格差はますます広がっていると強く感じます。
しかし「有効求人倍率は高水準」「正規雇用の増加」「賃上げの実現」などと自分にとって都合の良い、ごくごく一部の数字だけを取り出してアベノミクスは成功したと言っています。
その代わりに「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ。公約違反ではないかとのご批判があることも真摯に受け止めている。」(平成28年6月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 首相官邸ホームページ 以下も同じ)としての再延期です。その「新しい判断」とは「専門家の多くが、世界的な需要の低迷によって、今年、そして来年と、更なる景気悪化を見込んでいます。」のことのようです。
専門家とは「ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授やクルーグマン教授を始め・・・」と名前を出しています。昨年の安全保障関連法案について多くの憲法学者が違憲とする指摘にはまったく耳を貸さなかったのに、自分に都合の良いことだけは学者の意見を振りかざしています。
また伊勢志摩サミットで提出した世界経済についての資料にはドイツとイギリスから異論が出たこと、そしてその資料自体についても疑問視されていることはすでに報道されている通りです。
「国民生活に大きな影響を与える税制において、これまでお約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、正に税こそ民主主義であります、であるからこそ、まず国民の皆様の審判を仰いでから実行すべきであります。」と言っています。それは「連立与党で改選議席の過半数の獲得」とのことです。
今回の再延期が認められるのであれば、例え「公約違反」であっても「新しい判断」があれば何でもできてしまうということです。それは過去の言葉にも適用されるのです。そしてその「新しい判断」は自分の狙いに合う専門家の意見を集め、都合の良い部分だけを取り出せば良いのです。
「社会保障の充実を行います。必ず実現します。」「徴兵制の導入はまったくあり得ない。断言します。」
実現の可能性がなくても、実現するつもりがなくても、何でも言いたい放題です。そのことで私たちが「安倍首相は力強いリーダーだ。」「この人しかいない。」と思ってしまえば、それは独裁者への道を開いてしまうことです。
安倍首相に「新しい判断」という魔法の言葉を与えないためには、今度の選挙で連立与党に過半数を与えてはいけません。絶対に阻止しなければなりません。
日本を、そして何よりも私たち自身を守るために。