初めてその姿を見たのは、三度目に山口を訪れた時でした。どこへ行くにも、食べることが最優先のおじさんとおばさんにとって、観光名所を訪れるのはどちらかというとおまけみたいなものになっています。実はこの時も、「山口市って特別何にもない街だね」などと言っていて、どうやって時間を使おうかと悩んでいたのです。
そんな時、「時間があるのなら行ってみたら」と勧められたのが「国宝 瑠璃光寺五重塔」でした(おじさんの大学時代の恩師夫妻が山口市に住んでいます)。市内を散策しながら行き、五重塔のある香山公園に足を踏み入れた瞬間、その美しさに魅了されました。
山口市への評価が一気に高くなったことは言うまでもありません。
そして今回、四度目の訪問が決まった時も絶対に行こうと決めていました。まず、夕方に寄ってみました。ちょうど音声ガイドが流れていたので耳を傾けていると「ライトアップされる」という案内が。せっかくの機会だから何とか見たいという気持ちがムクムクとわき上がり、恩師夫妻も誘って夕食前に一緒に行くことに。
運のいいいことに、公園内には私達以外誰もいませんでした。ライトアップされた五重塔を見上げ、ふと池に目をやると、水面に五重塔が完全に映し出されているではありませんか。その美しさと言ったら・・・。風が吹いたり、鯉がはねると水面が揺れて、吸い込まれそうなほどのくっきりした姿にも影響します。そういう意味でも本当にラッキーでした。
そして翌朝、山口を発つ前にもう一度行きました。今までにも京都や奈良で素晴らしい寺院等は見ています。それなのに、どうしてこの五重塔にこれだけ惹かれるのか自分でもよくわかりません。派手さはないけどいつまでも見ていたい。そして見ているだけで言葉は要らない。そう思わせる力があるのです。
感動すると人は無口になるのかな。そんなことを思いながら、倉敷で開催された「吹奏楽の祭典」を楽しんで帰りました。