パターンA
カミューが第一部隊に所属するのと前後して、彼は第十部隊長職に任ぜられる。
折角同じ部隊になったのに───とがっくりしながら、着実に隊長としてのつとめを果たす。
やがて騎士団領内に入り込んだ無法者討伐の任において、負傷した部下を逃がそうとした際、敵の刃を受けて憤死。
今際の際にロックアックスに在る若き騎士を想いながら微かに笑むのだった。
「畜生、こんなことならもっと真面目に口説いておくんだったぜ……」
「もう話は聞いてやれないからな、……あんまり泣かされるんじゃないぜ、カミュー」
ついでに憎っくき恋敵の青騎士にも一言。
「あいつを粗末に扱ったら化けて出てやるぞ、くそったれ」
赤騎士団・第十部隊長ヴィトー、享年20代前半。合掌。
パターンB
才覚はあるが、ひとつところにじっとしていられない質の彼は、ある日突然、惜しまれながら騎士団を辞す。
だが数年後、カミューが上官に言い寄られて大ピンチに陥ったとき、風車を飛ばしながら何処からともなく現れる。
「危なかったな、カミュー」
「ヴィトー様、何故ここに……それより、今までいったい何処でどうなさっておられたのです?」
「聞くなよ、野暮だぜ。おれはいつだっておまえを見守っている。昨夜あの野郎と致したこともお見通しさ」
「……………………」
「おまえが危ないときにはいつだって駆けつける。おれは常におまえの味方さ。じゃあな、カミュー。元気で暮らせよ」
風を切って去る男の背に向かってカミューは呟く。
「ヴィトー様、それではストーカーです……」