平和の情景


このところ、カミューの気分は地に減り込んでいる。
柔和な笑みは辛うじて健在ながら、腹心の部下には相違が見取れるらしく、何かと気遣われる日々が続いている。
古巣ロックアックスを離れて二十日あまり、新たな住処となった新・都市同盟軍での忙しない生活を前に、郷愁に耽るような赤騎士団長ではない───上官を良く知るだけに、騎士らの困惑は深いようだ。
もの問いたげに窺われるたびにカミューは嘆息するしかない。陰欝の理由はあまりにも滑稽なのである。共に騎士団を離反した青騎士団長、半身たる男に顧みられぬからだ、などとは言葉にするにも不本意に過ぎた。
けれど、同じ部屋に居所を与えられながら、日につとめ以外の会話は殆どなく、こうもすれ違いが続いては気も滅入るというものだ。かつて騎士団の居城に暮らした頃には、所属の違いを越えてなお、親愛の時間を育んできた二人であるのに。
自団のおよそ半数ずつを率いての離反は騎士団長という役割にも多少の変化をもたらした。
机上のつとめを苦手とするマイクロトフの分までカミューが責務を負うようになったのは自然の流れだっただろう。逆に、事務作業によって削られる部下の訓練時間をマイクロトフが補佐するのも、欠落を埋め合う伴侶に相応しい仕儀だったかもしれない。
そこまでは良い。問題は更に先にあった。
二人は一日の大半を別々に動き回ることが多くなった訳だが、夕暮れ前の束の間だけは休息時間が重なっていた。最初の数日こそ、軽食を摘みながら何気ない会話に興じたり、ときには居室で穏やかな抱擁を交わしたり、何処に在っても変わらぬ情愛で結ばれた互いを確かめられた。
ところが、時置かず様子が転じた。正確には、本拠地の敷地内に設えられた道場に案内されたときからである。
ここは各地から集った同盟兵らが鍛練を行う場の一つだ。屈指の軍事力を誇るハイランド王国兵には明らかに力の劣る兵士たちが、けれど対等に渡り合うだけの力を得ようと粉骨砕身で励んでいる。
マイクロトフという男は、こうした図には無条件に弱かった。たとえ練度は低くとも、屈せず、臆せず、自らを磨こうとする姿勢。日々精進を怠らぬ男の胸に、同盟兵らの雄姿はすっぽりと填り込んだのだ。
その足で彼は軍師の部屋へ向かって願い出た。空いた時間を利用して兵の訓練に助力したい、と。
それは無論、願ってもない申し出だったに違いない。個人としての武力は無論、騎士という組織立った軍事行動の専門家たる男の指導ほど寄せ集めの兵にとって有効なものはない。
次第に苛烈を増す戦局を鑑みても、戦力増強は同盟軍における最優先事項だ。軍師は、飽く迄も余暇の範囲内で、無理せぬようにと条件をつけた上で──既に突っ走り易いマイクロトフの性情を把握していたのかもしれない──これを許可したのだった。
以後、自由時間には道場に足を運ぶのがマイクロトフの日課となった。同盟兵たちは騎士ほど過酷な訓練に慣れていなかったが、そこはマイクロトフも弁えていて、相手の力量を量りながらの指導を行っているらしい。いつしかカミューの耳にも、熱心に兵士の鍛練相手を努める男を絶賛する声が聞こえてくるようになっていた。
さて、何故そこでカミューが薄暗い気分に陥っているかと言えば、実に単純な図式なのだ。
二人で過ごしていた時間を、マイクロトフは同盟兵の訓練に費やすようになった。結果、ただでさえすれ違い気味だった生活が断絶に近い状況に至ってしまったのだ。
これまで、閣議や机上の執務の合間をぬって自室に戻れば、短い憩いが待っていた。その後、夜間訓練や周辺の巡回の任に臨むための、それはささやかな活力の源だった。
しかし今は、独りぼんやりと茶を啜り、幾度も読んだ書物の頁を捲っては溜め息を吐く毎日だ。自身らしからぬ引き籠り気味の生活が、いっそうカミューを憂鬱に誘っているのである。
何よりも彼を消沈させているのはマイクロトフの態度だった。直属の部下以外の鍛練まで引き受ける、それはカミューにも理解出来ぬ心情ではない。長い付き合いだ。道場で、『兵たちの士気が高い』との賛辞を口にしたときから予想もしていた。
だがマイクロトフは、それをカミューに勧めようとはしなかったのだ。訓練教官の任に就くことを独断で決めてしまい、『共に』とは一言も言おうとしなかった。結果として失われる二人の時間にもまるで頓着がないようで、カミューとしては突然放り出されたような心許なさを禁じ得ない。
一度だけ、話を向けたことがある。もっとも、心の何処かに蟠るものがあったため、そうした点に疎いマイクロトフには遠回し過ぎたかもしれない。
『同盟兵の訓練はどうだ』との問いに、彼は『とても充実している』と答えただけだった。そう完結されてしまうと、子供染みた意固地と分かっていても、自ら『協力する』とは言い出しづらくなる。何事にも器用であると自他共に認めるカミューは、だが己の心情を素直に吐露することだけは苦手な青年なのである。
騎士の訓練を終えた足で、マイクロトフは道場に向かう。
そして日も暮れた頃、高揚し切った顔でそこを後にする。
それから後も何かと雑事に時間を取られ、気が向いた時に浴場へ向かい、他の仲間に捕まって食堂か酒場で夕食を取る。つまり、部屋に戻る頃には殆ど睡魔に侵食された状態なのだ。
そこで漸く顔を合わせても、甘い交情どころか、会話もろくに交わさぬまま寝台に倒れ込む───それが最近のマイクロトフの生活となっている。
そんな訳で、片やカミューは、大の字で寝息を立てる男の身体を上掛けで覆いながら、悄然とも悶々ともつかぬ欝屈を積み上げていたのだった。

 

 

 

 

 

珍しく早い時間に執務を完遂し、自室へと退こうとしていたカミューの足下に、ひらりと紙切れが舞い降りた。怪訝に思いながら拾い上げて周囲を窺ってみると、少し離れたところで数人の少年が言い争っている。
喧嘩か、一度はそう思った。他愛ない諍いなら、見て見ぬ振りで通しただろう。けれど流せなかったのは、一人が数人に囲まれていたからだ。
カミューは背を正し、ゆるゆると歩み寄った。常なる穏やかな笑みを湛え、少年たちに呼び掛ける。
「どうかしたのかい?」
突然の闖入者は彼らを仰天させたようだ。真剣に何事かを言い合っていた一同は、即座に振り向き、そして目を瞠った。
「カミュー……様?」
新同盟軍に落ち着いてからそれほど経っていないのに、住民の子供に名を知られていたのは小さな驚きだった。そう言えば、住民との交流にも久しく消極的であった。こうした人々こそが自身の護るべき存在であるというのに───やや反省しつつ、いっそう笑みを深めて近寄ったカミューは、子供相手には似合わぬ丁寧な会釈をしてみせた。
「やっぱりカミュー様だ、そうでしょう?」
「お見知りいただいて嬉しいよ」
すると少年たちは諍いも忘れたように顔を輝かせる。
「マチルダの赤騎士団長様ですよね」
「元、だれどね」
「男の人なのに凄く綺麗な方だ、って父さんが言ってたけど……本当ですね!」
「あ、……りがとう」
カミューは笑顔を引き攣り気味に強張らせながら、かろうじて返した。
古巣ロックアックスでも城下の子供と接する機会はままあった。だが、マチルダ領民の騎士に対する崇拝は並ならぬもので、そうした空気に育つ少年少女らにも、何処か子供らしからぬ、一線を引いた節度のようなものが感じられた。
こんな正面切っての親愛には慣れず、また、言われた台詞も微妙に首を傾げずにはいられない内容だったので、いつもは得意とする麗句や機転が巧く働かなかったのだ。
「それより……」
漸く気を取り直して本題に戻ろうとしたところで、少年の一人がカミューの手に在る紙片に気付いた。見るからにひ弱そうな、眼鏡を掛けた小柄な少年。それは一同が取り囲んでいた一人だった。
「ごめんなさい、それ……僕のです」
「危うく踏むところだったよ、持ち主が見つかって良かった。遊び道具かな?」
子供同士の力関係に物申すのも何だが、大勢で一人を苛めているなら、大人としては説教の一つもすべきところか。思案していると、耳慣れぬ響きが続いた。
「紙ひこうき、です」
刹那、他の少年たちが一斉に声を上げる。
「だから、変な名前で呼ぶなってば!」
「変じゃないよ、だって……」
もぐもぐと口籠って唇を噛む姿に哀れを誘われた。まあまあ、と割って入ってカミューは問うた。
「これは、飛ばして遊ぶものなのかい?」
紙片を折り畳んだ形は鳥のようにも見える。得たりといった面持ちで別の一人が乗り出した。
「はい、飛んだ距離を競争したり、的に当てたりするんです。折り方を変えると飛び方も変わるんですよ」
ふうん、と眺め入ってにっこりする。素朴だが、考えようによっては緻密な計算を要す遊びだ。すると、研究者肌の少年が競争に勝ち、それを面白く思わぬ仲間たちに横槍を入れられていたのだろうかと考えた。
だが、事はそう単純ではなかったようだ。一人が憮然と訴える。
「これまで『折り紙飛ばし』って呼んでいたのに、こいつが急に変なことを言い出したんです。カミュー様、空を飛ぶ船なんて嘘っぱちですよね?」
「空を飛ぶ船……?」
些か面食らってカミューは首を傾げた。けれど、眼鏡の少年は必死に口を挟む。
「だから話したじゃないか。今はないけど、いつか出来るんだよ」
「いつか、っていつだよ。嘘を言うなよ」
「だってアダリーさんが言ったもの!」

 

発明家・アダリーを紹介されたのは、『エレベータ』なる不思議な移動手段の前だった。
変わった職務を標榜する男は、日頃から工作に没頭し、その中の一つが本拠地に採用された『エレベータ』だと言う。
どういった仕組みかはともかく、労せず各階を移動出来るのは便利だったし、カミューも心底感嘆したものだ。ただ、仲間のアダリーへの評価は『変な作品が大半を占める』に終始し、偉大な発明も隅に追い遣られがちだったが。

 

「……アダリー殿は何と仰ったんだい?」
嘘つき呼ばわりされた悔しさに頬を染めている少年を見詰めて優しく尋ねると、彼は縋るような眼差しでカミューを見返してきた。
「ええと……、『かがく』がうんと発達して、色々な機械が作れるようになったら、いつかきっと空を飛ぶ船が発明される、そうしたら『ひこうき』なんて呼ばれるだろう、って……」
「空を飛んで行く機械……それで『飛行機』か、成程ね」
未だ指先に摘んだままの紙片を凝視し、角度を変えて検分してみる。それは船というより、やはり鳥に似ていた。眼鏡の少年は想像力に富んでいるようだが、他の子供たちが納得出来ないのも無理ないかもしれない。
「ね、カミュー様。ありもしない機械の名前なんかで呼ぶのは変でしょう?」
「船が空を飛べる訳がないですよね」
同意を求めるように顔色を窺う少年、味方して頷く顔を見回し、カミューは苦笑した。
───まったく、この本拠地は平和で良い。
子供たちがささやかな口喧嘩に興じていられるのも、兵士らが身を粉にしてつとめているからだ。民の安息を護ろうと、自らを叱咤して戦っているからなのだ。
彼らの戦力を少しでも高めたいと協力するマイクロトフの姿勢は全くもって正しい。デュナン中の民が憩える平穏を築く、たとえ『私』を削られても、そのために古巣を離反してまで同盟軍に参加した身ではなかったか。
ひっそりと息を吐き、カミューは少年たちに視線を合わせて身を屈めた。
「……ずっと昔、船がなかった頃には、デュナン湖の向こう岸に渡るのも難しかった筈だ。けれど人は長い歳月を掛けて知恵を凝らし、船を作って行き来を可能にした。だから、空を飛べる日が来ないとも限らないんじゃないかな」
眼鏡の子供はぱっと顔を輝かせ、他の一同は困惑げに眉を寄せた。一際大柄な少年が憮然と頬を膨らませて独りごちた。
「でも……やっぱり空飛ぶ船なんて変だよ」
カミューは笑いながら続けた。
「では、どんな形なら良いかを考えてみたらいい。……こんなふうに」
指先に摘んだ紙細工。へしゃげた羽根の部分を軽く整え、ひょいと少年らの頭上へ飛ばす。脆い紙片が柔らかな風に乗って、ひらひらと旋回を重ねた。
「鳥のように翼があれば風を利用出来る。『飛行機』というのは、案外、そんな形になるのかもしれないね」
弓矢の成り立ちを過らせながら言った。矢を飛ばすには常に風を計算に入れる。風を捉え、如何に巧みに支配出来るかが飛行の焦点なのだ。
「考えてごらん、空を旅することが出来たら素敵じゃないか。深い谷や険しい山、陸路では挫けそうな旅も思いのままだ。たとえ何百年先になっても、そんな機械が作られたら、とても素晴らしいと思うよ」
はらり、と紙の翼が地に落ちる。少年らは暫く互いの顔を窺っていたが、やがて照れ臭そうに笑い合った。
「……人間が乗る機械は無理でも、玩具ならアダリーさんに作って貰えないかな。こんな紙じゃなくてさ、木とか金属とか、もっと本物っぽいのを、さ」
「どうせなら格好良い形がいいよね、色々折ってみて、参考にして貰おうよ」
それから眼鏡の少年に一同の視線が注ぐ。
「どうしたら『紙飛行機』の飛距離が伸びるか、考えてみてよ」
「う……、うん!」
子供たちは明るい和解に至り、個々の懐から大量の紙切れを取り出した。カミューは琥珀を細めてそれを見届け、ゆっくりと背を正した。
「それじゃ、仲良く研究に励むんだよ」
「行っちゃうんですか、カミュー様?」
「うん、そろそろ戻らないと」
彼らは名残惜しそうにカミューを囲んだ。
「ねえ、カミュー様。最高の『紙飛行機』が完成したら、見て貰えますか?」
「勿論だよ」
彼は破顔した。
「わたしも良いことを教えて貰ったからね」
そして一斉に怪訝そうな面持ちになった一同から踵を返す。
今度、試してみるとしよう。意に染まぬ書類が回ってきたら『紙飛行機』とやらを作って飛ばしてしまおう。執務机から屑入れに直行させるには、それなりの技が要るだろう。何事も、熟練への到達には日々の精進が肝要だ。
美貌の赤騎士団長は久方ぶりに明るい笑みを湛えて自室への歩を早めた。

 

 

 

 

陽光も陰り、そろそろ城中が一日の終わりを窺わせ始めた頃。
カミューは自室の窓枠に腰を落としていた。
見下ろしているのは、道場のある別棟と騎士らの居住区に充てられた西棟を繋ぐ細い通路だ。道場からは建物の外に出ず、直接西棟に入る経路もあるが、訓練後の高揚を冷ますためか、マイクロトフは必ず屋外の通路を選ぶ。計ったように同じ刻限に現れては、心地良さそうに風に酔い痴れるのである。
今日もそうして姿を見せたマイクロトフ目掛けて、カミューはひょいと『紙飛行機』を飛ばした。狙い違わず足下に舞い落ちた紙片を一瞥するなり、彼は頭上を見上げて目を剥いた。
「カミュー! 何をしている、危ないではないか!」
だが、カミューが表情も変えぬまま落ちた紙片を指すと、マイクロトフは困惑げにそれを拾い上げた。翳したり、引っ繰り返したりしているうちに紙面に書かれた文字に気付いたようだ。慌てて折り目を解いて一枚の紙へと戻す。

『あまり放ったらかしにすると浮気するぞ』

ぎょっとしたように強張るのが二階の窓からも見えた。何事か弁明しようとでもしたのか、急いで見上げる男に次の『飛行機』を飛ばす。
これはやや風に流れて目測を誤った。マイクロトフは大慌てで植え込みへと飛んでいく紙を捕えに走った。

『わたしはレディばかりか、父親世代の御仁や子供にも好意を持っていただけるようだ。後で泣いても知らないぞ』

冗談だと悟った男の体躯から力が抜ける。苦笑混じりに見上げた瞳は、だが微かな自責も浮かべていた。
そこでカミューは第三の想いを飛ばす。

『今のおまえは、わたしの存在など忘れてしまったかのようだ。どうして独りで突っ走る、「共に」と言ってくれれば協力するのに』

階を隔てての紙面の遣り取りに倣おうとしたのか、マイクロトフは懐を探り始めた。だが、訓練直後の身には筆記用具などあろう筈もなく、仕方なしといった顔で声を張る。
「……同盟兵の鍛練に付き合うのは、おれの個人的な希望に過ぎない。環境が変わって、おまえはおれの幾倍もの机上のつとめを抱えている。この上、私的な時間まで費やすような負担を掛けては、と思ったのだ」
当然、答えを予期していたカミューだ。用意していた紙片の一つを選んで窓外へと放つ。

『必要とされないなら、居なくても同じじゃないか』

これにはマイクロトフも深々と考え込んでしまった。が、少しして、おずおずと躊躇いがちに顔を上げた。
「……おまえの方から協力を申し出てくれたら良かったのに」
カミューはプイと外方を向いた。届かぬかもしれない小声で唸る。
「貴重な自由時間じゃないか。多少は未練だってあるさ、馬鹿」

 

否、本当は少しだけ怖いのだ。
何を置いてもマイクロトフ第一に考えてしまいそうな自身が───恋を知ったばかりの若者や乙女のように、傍に在りたい、姿を目にしたいと願う自分と直面してしまったから。
吐息の届く距離に立ち、瞳の奥に映る自身を確かめ、相手の心のすべてを埋めていると実感したくて。そんな幼い束縛欲に捕われる自身こそが怖かったのだ。
たとえこうして距離が存在しても、想いを風に乗せ、届けることとて出来るのに。

 

身じろぎもしなくなったカミューを暫く見詰めていたが、そのうちにマイクロトフはあたりに視線を巡らせ、一本の枝切れを手にした。屈み込むのを何事かと見守っていると、少しして作業を終えた彼は誇らしげな顔で窓辺を見上げた。
よくよく目を凝らすと、生い茂った緑が途切れた赤茶の地面に小さな文字が見て取れた。

『明日からは一緒に』

微笑んで頷くと、マイクロトフは一旦文字を足で擦って消した。続いて書かれた一文は、思い掛けずカミューを動揺させた。

 

『愛している』

 

すれ違いの時間に生じた寂しさでも慮ったのか、それはひどく歪んでいたけれど、マイクロトフには精一杯の心であるようだった。
「……そういう台詞は、直接言ってくれないと……」
仄かに熱くなる頬を堪えつつ、カミューは憮然と唸って腰を上げた。使わなかった紙細工を丸めて屑入れに投げ込み、真っ直ぐにここへ向かっているであろう男を思い描く。
言葉にするには躊躇う諸々も、こんな手段で伝えられるときもある。御蔭で、どうやら久々に優しい温もりに包んで貰えそうだ。
明日からは共に道場に足を運ぼう。些細な意地を張るよりも、子供たちに論じたように、素晴らしい未来を信じながら伴侶の傍らで邁進する方がずっと楽しいに違いない。
駆けてきたのか、開いた扉から現れた精悍な顔は紅潮している。幅広い胸に抱き締められる一瞬に、あの照れ臭い落書きは消してきてくれただろうかと、そんなことをカミューは思った。

 

 


嫉妬する……と言うより、
寂しんぼう+スネ気味な赤になってしまいました。
此度も外したっぽいです、すみません指令者様。

さて、小道具の「紙飛行機」ですが。
ないじゃん! 幻水世界に飛行機!!
当然、その呼称では変だけど、言い換える言葉が思いつかず、
アダリー氏を引っ張り出す羽目に……(笑)

階の上下で話してる青赤、
一見、ほのぼのムードっぽいものの、
あなた方、年は幾つッスか。と、突っ込んでみたり。

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