朝日薬剤師セミナーに参加して
―症例検討から見るがんチーム医療―

平成17年7月3日(日)九段会館ホール

主催  朝日新聞社

後援 厚生労働省/ 日本病院薬剤会/日本薬剤師会/日本薬学会/  日本医療薬学会

協賛 アストラゼネカ株式会社

 

座長

井上 忠夫先生  聖路加国際病院 薬剤部長

 

講演・パネラー 

片山 志郎先生  日本医科大学 薬剤部 副部長

演目 がん化学療法をエビデンスで読み解く

 

講演・パネラー

中村 清吾先生  聖路加国際病院 ブレスとセンター長 乳腺外科部長

演目 乳癌標準治療2005 −ガイドラインをどう使う、どう活かす−

 

パネラー

遠藤 久美子先生 静岡がんセンター看護部

パネルディスカッション(趣味レート・カンファレンス)

演目 症例検討から見るがんチーム医療における薬剤師の役割

雨模様の7月3日(日)。東京都千代田区にある九段会館に次々と人が入っていく。14:00からのセミナーだったが、開演時間前には3階まである座席がもう満席。予想以上の熱気が感じられた。細かい挨拶などはあまりなく、直ぐに講演となる。初めに話されたのは片山志郎先生。次々と最新医療が紹介される癌治療において、内外における専門薬剤師の現況や役割、日本の取り組みなどを話してくれた。この中で触れた乳がん治療における代表的なガイドライン『ASCOガイドライン』『NCCNガイドライン』『St.Gallen Recommendation』への認識の必要性と、それらの比較はとても参考になった。

次の講演は中村清吾先生。乳がん治療に関し精力的に講演されているので、中村先生の話を聞くのはこれが初めてではない。もう、4回目になる。しかし、いつも新しいことが得られる。今回は最新の乳がん標準治療に関する情報を中心に話してくれた。いつも世界に目を向けている中村先生の話を聞いていると、自然に視野が広くなる(気がする)。今年1月26−29日、スイスで開かれたSt.Gallen Recommendations2005での話題にも触れた。その中で、欧米が乳がん治療において、いかにガイドラインを重要視しているかや、その位置づけなどを話してくれた。新しい情報収集や集積は個人の努力によるところが大きいが、個人では限界がある。このような機会に多くめぐり合いたいものだと思った。

そして遠藤久美子看護師を加えてのパネルディスカッション。朝日総合病院という仮想上の総合病院を舞台に、薬剤師としてのかかわりをシュミレーションした。薬剤師としてかかわることのできる範囲は限られているが、かかわらなければいけないことのいくつかが具体的に認識できた。病気に関する詳しいメカニズムや、薬が作用する仕組みなど、日々最新情報がもたらされる今日、医師だけでなく薬剤師にもその高度な専門性が要求されてきていることがわかった。

会場を見ると満員。みんなメモをとりながら真剣に参加している。ざっと見て500名くらいはいたと思う。大きな病院に勤務する東京の病院薬剤師が多かったように感じた。仲間内で集まっていろいろ話し合っている。私のように山梨から来ている人間はごく少数だ。しかも病院勤務ではない。講師の中村先生は、海外と日本の乳がんに対する取り組み方のギャップを話されたが、日本の中でも東京と地方では、世界と日本以上のギャップがあるのかも知れない。もっとも、私が知らないだけのことで、それぞれの都道府県において、現場のスタッフは日夜努力し、地域間格差など存在しないのかもしれないが・・・。

また、乳がん治療に際し、ガイドラインを使うことの重要性についても触れられたが、治療を受ける側としては、はたして自分が受けている治療がガイドラインに沿ったものなのか、また、沿っているとしたらどのガイドラインなのか、現在の状況では知る術がない。

乳がん患者として手にする本のリストに『金原書店―科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン―』を入れるべきなのかも知れない。

いずれにしても、一朝一夕には進んでいかない取り組みだし、個人の力だけではどうにもならないことだが、このような機会が多く開催され、患者主体の医療とは何なのかが全国規模で話し合われていけたら、患者にとってさらに充実した医療システムになっていくものと思われる。

これからの専門薬剤師育成の取り組みが成功し、どの地域でもチーム医療によって医療が受けられ、患者のQOLが高められることを期待したい。

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