俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記


 町にクリスマス・ソングの流れる季節となりました。街路樹もライトアップされ、それぞれのおうちでも、夜ともなれば様々趣向を凝らしたクリスマスの明かりがともります。寒い夜を楽しくしてくれますけれど、星は隠れてしまいますね。


 子供のころ読んだお話「山のクリスマス」に、少年がストーブで焼き林檎しようと思うシーンがあって、おいしそうだな、とおもったものでした。素朴なチロルの昔々の山の生活の匂いが好きなお話でした。そのせいか、今でも、冬林檎を見ると、北方の詩情というか、寒い国の暗い夜にひときわ輝く星々が連想されるんです。


 と、いうわけで、今日のメイン・ディッシュはチキンの胸肉のリンゴソース煮込みです。リンゴソースは前夜干しブドウを赤ワインに漬けておいたのを、痛めた玉ねぎ、別に炒めたリンゴにぶっかけてちょっとに詰めるだけ。バルサミコ酢があれば上等ですがリンゴ酢でも黒酢でも、ちょっと足して、リンゴの甘味との、甘酸っぱいワイン色のソースにします。チキンは普通に塩コショウでいためますが、私は最後にソースを煮詰めるときに一緒に入れてしまうので、チキンの表面に色がついてます。その奥、左はチコリにトリュフ・チーズ、と、胡桃のサラダです。器は染付チシャの葉形向付け。


 真ん中のカフェ・オ・レ・ボウルには緑のシチュー。さて、この緑、なんでしょう?キノコのシチューに、最後に投入したのは、ユーグレナ!最近目にしますでしょ?栄養食品として売り出し中の、ミドリムシです。生物の時間に習いましたよね。植物と動物のどっちの性質も持っている奇妙な生き物です。鞭毛を振って元気に動き回っていましたね。それで動物と植物のどっちの栄養素もあるのだそうです。お味は、抹茶みたいです。苦味はありません。粉末の中に鞭毛の痕跡を探しても無駄でした。

   刃をあててかがやきが増す冬林檎   今瀬剛一

 たしかにリンゴの表面はピカピカしてますね。冷たい空気に硬いリンゴの触感が印象的です。現在のリンゴは明治期に西洋からもたらせたものなので、古歌などには、リンゴはあまり詠われていませんね。野性的な小さなリンゴもたまに食べてみたいですけど。


 ヨーロッパではリンゴは詩にも絵画にもいやというほど溢れていますね。アダムとイヴのリンゴもどこでも描かれていますが、個人的にクラナッハとかフランドル絵画のリンゴの艶が良いような気がします。北方のイメージに捕らわれすぎているのでしょうか。いつかノルマンジーのリンゴの礼拝堂に行ってみたいものです。日本の方が改修なさったんですよね。廃墟の教会や小さな神殿は、たまらなく魅力的ですものね。

 

 神殿を出る冬林檎齧りつつ    おるか 

2016年12月5日