俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記

 九月に入ると夜はさすがに涼しくなってきました。秋の夜ではなく夜の秋。月を待ちながらの一献が楽しみな時節です。


 写真中央の荷葉型小付けに、ぶなしめじと小海老の枝豆豆腐和え。その向こう茄子形小向付に無花果のクリームチーズと白味噌乗せ焼きです。無花果はもちろん生でも美味しいですが、料理してもなかなかです。今回は味をなじませる程度に火を通しただけですが天婦羅にしてもいいですね。黒田杏子先生に、こういう句があります。


  いちじくを割るむらさきの母を割る  杏子 


 確かに、無花果の丸い形は、宇宙卵のようです。その中にびっしりと詰まった赤紫の甘い果肉は子宮を思わせるイメージがありますね。


 無花果の原産地は小アジアだそうです。そのせいか聖書に無花果はしばしば描かれます。楽園にも生えていたんですね。そのほかにも、聖書マタイ伝に磔刑の数日前、「今より後永遠に実を結ぶな」と予言?されたり、どうもあまり愛すべきイメージのない植物だったみたいな…。


 さて、写真左の蕎麦猪口にはモズクとオクラの酢の物。色絵撫子の杯。その向こう、染付に色を添えた加彩手の四方鉢に、サトイモの煮たのと、サンマのお刺身です。加賀市には、山も海もあるんすよ。橋立漁港で今朝揚った秋刀魚。青紫蘇に隠れてしまいそうです。


  お酒の肴は、たくさん食べるものではありませんし、季節感とか風情がなんといっても大事ですね。そのわりに、ちょっと盛りすぎてしまいました。月を待つ膳の上に、なにか物語を演出できるとよかったんですけど、好きなものを並べてしまって。食べたいものがいろいろあるって、風流じゃないのかな。

 

      無花果の乳に指濡らす無月かな    おるか


2016年9月5日