俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記

夏の昼食


 七月に入って急に暑くなりました。そんな日はやはり、喉ごしのすずしい、素麺、冷や麦の類が食べたいものですね。窓の外の緑の影もいよいよ濃さを増しています。

 写真手前の蕎麦猪口は夏草紋様。染付にところどころ鶸色と黄色の色が差してあります。鶸色はやや黄色がかった明るい緑色です。隣の蓮華に切りゴマ。その右上、染付木の葉形向付に夏野菜と鳥そぼろうどん。うどんは氷見うどんといって、やや細めの麺です。稲庭うどんほど有名ではありませんが、お味はけっこういけます。北陸には、この氷見うどんのほか大門素麺等、知られざる美味しい麺類があるんですよ!

 さて、そのお隣は帆立貝とアボカドに、レモンを添えたサラダ素麺です。器は染付加彩手撫子文様小菓子鉢、新作です。左の卵豆腐とモズクの酢の物の入っている器も、加彩手撫子文飯碗です。撫子は秋の七草に入っていますが、我が家の庭には今咲いています。か細く見えて、夏の暑さにも負けない強い花ですね。これまでにも染付で描いたり色絵にしたり撫子の文様は描いてきましたが、今回は染付と色絵を併用した形でつくってみました。

 中央の大皿には、箸休め(?)に蛸のマリネとか薬味とかいろいろ。お皿いっぱいの文様は梔子の花と玉虫です。このところ白い花シリーズと銘打って白い花を描くことに夢中になっています。白は磁器の白い肌を塗り残すことで表現します。まず染付の部分を描いて一度本焼きし、その後、色絵の部分を絵付けします。頭の中で想像した通りにはなかなかゆかないので、この大皿はこうして普段使いにして、使いながらもっとデザインを考えてゆこうと思っています。

 白い花は好きなので、描きたいものはたくさんあります。次は夏までに睡蓮の皿を作りたいと思います。梔子は花も、ゆうやみにうかびあがる時は殊に印象的ですし、このところの雨の多い湿ったお天気には、あの甘くやや重い香りが官能的です。ときには鬱陶しくなるほどのその香りを、歌人の塚本邦雄は「年上の女の香り」と評していました。確かに濃艶で、時には嫌悪さえおぼえるけれど、かといって嫌いにはなれない香りです。

 左の瑠璃ガラスのお皿にはひよこ豆や押し麦など豆と穀類のサラダ。瑠璃ガラスの上ではどんな料理も宇宙にうかぶ花のよう。。

 梔子は花はもちろん葉も常緑で緑の消えた冬の庭にはうれしい存在です。そして、その実で黄色く染めたきんとんとんはほのかに香りがして、風情があります。いちど梔子御飯でもつくってみようかしら。

 

          梔子を活け暗きひと思ふかな おるか 

2016年7月4日