声劇用台本/流れる季節の中で

 



西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。
           やる気がないだけとも積極性が無いだけとも







笹山 唯♀ おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。











        第六話 『あなたの為の時間を』




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和真 「よし、間に合ったっ……って……まだ5分前だし……」
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「おはようござます。西沢くん。どうしたんですか?」
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和真 「え?ああ、笹山か。おはよ……ちょっと……急ぎすぎた」
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「走ってきたんですね。あれ、時計持ってないんですか」
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和真 「いや、忘れたから、途中の駅にある時計見てる」
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「あそこの時計5分くらい進んでますよ」
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和真 「やっぱそうかぁ……」
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「大変でしたね」
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和真 「はあ……まあ、寝坊したのがいけないんだけどね」
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「でも、遅刻しなかったからいいじゃないですかっ」
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和真 「そんな力説しなくてもいいってば」
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「そうですか? 落ち込んでるのかと思ったので」
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和真 「ちょっとは落ち込んでるけどさ。まあ、平気だよ」
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「なら、安心しました」
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和真 「そっか……あっ、昨日の渡すよ」
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「昨日の?」
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和真 「そう、コピーしたやつ……ええと……これだ。はい」
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「わ、ありがとうございます。こんなに……」
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和真 「どこ写すか聞いてなかったから」
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「あー! そうでした。ごめんなさいっ」
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和真 「いやぁ……俺も聞かなかったしねぇ」
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「でも、迷惑かけちゃいましたし」
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和真 「いいって」
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「でも」
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和真 「ほら、早くしないとチャイムなるし」
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「……はい。ありがとうございます。では、ちゃんとお礼しますから」
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和真 「別にいいよ」
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「え?」
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和真 「じゃ、席着くから」
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「はい……」








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「あの、西沢くん……」
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和真 「ん? どうしたの? あ……まさかコピーするとこ間違ってた?」
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「いえ、それは大丈夫でした」
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和真 「あー、良かったぁ……あ、じゃあ、何?」
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「もう、帰っちゃいますか?」
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和真 「ああ、掃除当番もないし、帰るよ」
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「予定とか、ありますか?」
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和真 「なんでそんな事聞くの? まあいいけど……本屋に寄るくらいかな」
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「良かったら、でいいんですけど今日お礼させてください」
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和真 「お礼って?」
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「あの……英語を教えて欲しいっていう」
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和真 「……ああ、あれかぁ。いや、別にいいってば。笹山も勉強あるでしょ」
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「え? いいんですか?」
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和真 「うん」
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「そうですか」
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和真 「ねえ、なんか具合悪い?」
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「いえ……ちょっと」
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和真 「……なんかあったの?」
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「……70点じゃダメですか?」
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和真 「え?」
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「70点じゃ役に立ちませんか?」
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和真 「え? そんなつもりで言ったんじゃなくて……ごめん」
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「謝らないで下さい。西沢くんは悪くないです」
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和真 「でもな……ええと、図書館でいい?」
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「え?」
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和真 「良かったら、でいいんだけど」
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「良いんですか? 私で」
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和真 「もちろん。お願いします、笹山さん」
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「はいっ、頑張りますっ」
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和真 「いやいや、頑張るのは俺だって」

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