声劇用台本/流れる季節の中で

 


西沢 和真♂  毎日をやる気無く過ごしている男の子。付き合いは悪くないが他人や周囲に執着する事が無い。台詞数:18


津久井 祐次♂ 能天気で明るい男の子。良い奴だけど、どこか抜けてる。
台詞数:32


日野 守♂♀   一見おとなしくて優しそうな雰囲気。だけど、言う事はきつい。自分は頭良いと思っている節がある。
台詞数:22





笹山 唯♀ 大人しい女の子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。今日と言う日を力一杯生きている。台詞数:19


麻田 梢♀   明るい子。優しくて他人を気遣うのが好き。
台詞数:25


















第二話「それは友達というもので」





時刻は8時25分。ざわざわと落ち着きの無いとある高校のとある教室。



1 祐次 「やー! 西沢くんっ」





 祐次はニヤニヤしながらそんな挨拶を投げかけた。



2 和真 「ああ、おはよ。津久井」
3 祐次 「おいおい、元気がないな。朝なんだから元気に行こうぜ」
4 和真 「朝だから元気ないんだよ。今日も学校まで20分も走ってきたんだから」
5 祐次 「ほほう」
6 和真 「なんだよ?」
7 祐次 「またあの子と一緒か?」
8 和真 「はあ?」
9 祐次 「だって、お前らいつも一緒に遅刻してくるじゃんか」
10 和真 「偶然だって」
11 祐次 「はははは、どうなんだかな?」
12 「津久井くんもしつっこいよねぇ」
13 祐次 「あーんだよ? 別にいいじゃねえか?」
14 「べつにいいけどさぁ、よくそのネタ続くよね」
15 和真 「こいつ、初日からその話してくるんだもんなあ」
16 祐次 「あー? だって実際そうじゃねえか?」
17 「何が実際なんだよ。4回一緒に遅刻してきただけじゃないか」
18 祐次 「4回も一緒なら充分だろ。まだ、2週間も経ってねえんだし」
19 「そんなもんかな。しかし、西沢くんもよく怒らないよねぇ。僕だったら津久井くんの上履きに画鋲入れてるとこだよ」
20 祐次 「あぶねーやつだなー。お前って」
21 和真 「まあ、悪気があって言ってるんじゃないしな」
22 「そりゃ、僕も分かってるけどね。他に話のネタはないの?」
23 祐次 「いや! あるぞ。入学式で――」
24 「二人が遅刻してきた話でしょ」
25 祐次 「おおっと! よく分かったな!? 守!」
26 「津久井くんの頭より簡単なものなんてこの世界には存在しないさ」
27 祐次 「まじか!? いや、でもそんな事は無いよな? 西沢」
28 和真 「は? ま、まあただの冗談だと思うぞ」
29 祐次 「あ、なんだそうなのか? 守が冗談言うなんて珍しいなぁ」
30 「……僕は、ただバカにしてただけのつもりなんだけどね」
31 祐次 「おお、そうなのか。全然気づかなかったぞ」
32 「平和な頭だねえ」
33 和真 「よくお前らケンカしないよなー。最初は見ててビクビクしたぞ……」
34 「それは――」
35 和真 「それは? ん……?」





 その時チャイムがなる。と同時に唯が教室に飛び込んできた。



36 祐次 「おー、笹山さん。オハヨー」
37 「はぁはぁ……あ、はい。お早う御座います」
38 「おはよう」
39 「はい。お早う御座います」
40 和真 「……あ」
41 「あ……えと」





 戸惑う二人。不意に教室の奥から声がした。



42 「唯ー! おはよう! また遅刻ギリギリだねー?」
43 「え? うん、そうだね? 梢ちゃん」
44 祐次 「今日は西沢と一緒じゃなかったんだな。笹山さん」
45 「う、うん」
46 「……津久井くん」
47 祐次 「あん?」
48 「ほら、早く席着きなさいよぉ。チャイム鳴ったんだから」
49 「うん。ありがとう」
50 「ふーん……」
51 祐次 「なんだよ。守」
52 「なんとなく。ね」
53 祐次 「しっくり来ねえな。なあ? 西沢」
54 和真 「ん、そうだな」
55 「大変だね(ぼそ)」
56 和真 「ぅ……」





 昼休み。教室で昼食を取っている和真達



57 祐次 「なあ、なーんかお前らおかしくないか?」
58 和真 「……そうかぁ?」
59 祐次 「とぼけるなよ。朝様子おかしかったろ」
60 和真 「別に、笹山とはなんにもないよ」
61 祐次 「誰も笹山さんなんて言ってないぜ」
62 和真 「あ……うん、まあ、なんでもないって」
63 「津久井くんもつくづく性格悪いね。っていうかデリカシーないよね」
64 祐次 「お前のきつさの方が性格悪いと俺は思うぞ」
65 「津久井くんは頑丈だからいいんだよ」
66 和真 「いいよ、日野。別に本当に何もないんだし」
67 「そうなの?」
68 和真 「ああ、俺も良く分かんないんだよなあ」





 同じく昼休み。屋上のベンチで弁当を食べる唯と梢



69 「ふーん。そうなんだ」
70 「うん。悪いなあって思うんだけど」
71 「じゃあちゃんと謝ればいいじゃない」
72 「そう思うんだけど、顔合わせるとなんて言っていいか分からなくなっちゃって」
73 「はっはっは、可愛い子だねぇ、唯は」
74 「か、からかわないでよぉ」
75 「からかってないって。正直な意見よ」
76 「もぉ……」
77 「ごめんごめん。本当はからかってた」
78 「やっぱりからかってたんだねっ。いじわるー」
79 「だから謝ってるんじゃない。で、西沢くんも落ち込んでるみたいね」
80 「え!? なんで?」
81 「やっぱ、気づいてなかったかぁ。今日唯が入ってきた途端表情暗くなってたよ」
82 「え、それって……嫌われ……ちゃった……のかな」
83 「そんないこと無いって! ……まあ、たぶん唯とおんなじようなもんよ」
84 「……そうなの? でも……」
85 「大丈夫だってば。なんならあたしから説明してあげてもいいんだよ?」
86 「え? 嬉しいけど……やっぱり、怒られそうで怖いよぉ」
87 「さて、どうかなー? あたしだったら怒ってるね」
88 「えぇっ!? やっぱり怒ってるんだ!」
89 「あはははは、いやー、唯はほんっとうに可愛いねぇ」
90 「ぅぅ……」
91 「でもさ、もし西沢くんが怒ってるとしたらそれこそ謝らないと」
92 「う、うん。そうだよね」
93 「謝って許してくれない、なんてことはないよ。元気出しなよ」
94 「うん……」
95 「あたしも応援してあげるからさ。ね?」
96 「うんっ、ありがとう」
97 梢M 「さあて、ちょっと頑張るかな」





 昼休みが終わる5分前、梢は祐次と守に声をかけた。



98 「ねえねえ。ちょっと来てくれる?」
99 祐次 「は? なんだよ。いきなり」
100 「いいからいいいから」
101 祐次 「あー??」
102 「いいよ。津久井くん、行こう」
103 祐次 「あ? ああ、別にいいけどよ」
104 「あは、ありがと」
105 祐次 「んで、どうしたの?」
106 「ほら、津久井くんたちって西沢くんと仲良いじゃない?」
107 「まあ、良いかもしれないね」
108 祐次 「お前、ひどいなぁ。友達だ、くらい言えないのかよ?」
109 「ふふ、まあ君たちが仲がいいのは分かったから、ちょっとお願い聞いてくれない?」
110 「うん、いいよ」
111 「あら、返事が早いのね。ありがとう」
112 祐次 「おいおい、いいのかよ。そんな簡単に」
113 「まあいいじゃん。聞いてみれば津久井くんも引き受けると思うから」
114 祐次 「……まあ、良いけどな。だから、お願いってのは何なんだよ?」
115 「私達にしかできない事よ」
116 祐次 「はあ? さっぱりわかんねえ」
117 「まあまあ、いいじゃない。付き合って頂戴」

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