沢登秀信氏の記念すべきファーストアルバム「強引にMy Way」。

そのアルバムに収められた曲のイメージを私なりに伝えます。

アルバムの製作過程でのエピソードもちょっぴり入っています。

(実は私も歌録りとミックスダウン時に同行してました。感謝!!)


1.ハレー彗星

この曲は昔から歌っていた曲ですね。その時にはドラムもキーボードもなかった。
けれどもイメージは昔と変わっていない。

冬の夜空の下、街を一人男が歩いている...
ハレー彗星のイメージから沢登ワールドが展開されている。

ギターの榊原氏の魂心の一発は必聴。
2.犬

この曲も昔からの定番中の定番。
犬へのヒデさんの気持ちを歌ったのか?もしくは自分が社会に出た事に対する現実を比喩的に歌ったのか? ”ほら、こんなに小さな小屋から出て自由になんな”と...

バンドとして完成させるには一番難しかったのでは?
3.くらし

この曲はバンドにベーシストの村上氏が入ってからの曲。田ノ岡氏のピアノの音がスピーカーから出てくると部屋のイメージが一転してしまう。重いよね、歌詞も曲もサウンドも。
”雨もしみない東京ぐらしを”はぐっとくるね。

いくら旅行をしてもその土地の人の気持ちになんかなれないし、帰ればまた普段の現実に戻される...

ボーカル録りの時、エンジニアの人が気持ちが入るように暗幕をボーカルブースに張ってくれて歌った。

エンディングの榊原さんのギターもこの曲の歌詞を気持ちで押し上げてくれる、そんな気合のこもった音に歌録りの後の視聴では涙が出てきてしまった。
4.5月29日の歌

今までのイメージとは一転、ほのぼのとした情景が伝わってくる曲。普段の生活の中のちっぽけな幸せがにじんでいる。言葉なく”幸せだなぁ”と感じられる。

田ノ岡氏が奏でるアコーディオンの音が愛する二人の言葉なき語らいを綴っている。
5.リラの花

これはヒデさんのフェバリット・ソング。ライブでのアンコールの定番中の定番。

愛する人への哀愁の想い、”なぜ君は僕から去っていってしまうんだ。この想いを何処かにぶつけたい”という気持ちが伝わってくる。

ライブではもっと激しく心を抉る。皆さん、ライブに行って聴いて見てください。
6.東京パラノイア

”誰かに見られている”と人の視線を感じる事は誰にでもあること。沢登ワールドにしてみたらこりゃ凄い!!

また、こんなに歌詞のイメージが出てくるサウンドもなかなかない。ひたひたと耳に突く靴音は...後ろを見たくても振り返る事が出来なくて気が動転している様子が出ている。

ベースの音に村上氏の凄みを感じさせられる。CDを買って聴いた時、曲間の田ノ岡氏のピアノの音に何故か涙がこぼれてしまった。
7.ふた

これだけ痛快に社会風刺してくれるのはもはやヒデさんだけか?

”ためしに今 道の上 ふたひとつ 開けてみな”、さあ何が出てくるか。

最後に入っているふたの音、これは偶然の賜物!!田ノ岡氏が気持ちをこめて弾いたオルガンのレコーディング時に氏の派手なアクションにヘッドフォンのふたがつい取れてしまってカラカラリンと...

ドラムのハットの刻みがまたよろし。
8.やまなしへ帰れし

これはヒデさんの真骨頂。誰もが持っている過去の面影に浸る自分と現実との葛藤を描いた傑作。”お前にゃ愛がない 土に生きる愛が...”なんて想ってしまったら泣けてくる。

なんとも暖かい仕上がりになっています。
9.強引にMy Way

期待と裏切り、出会いに別れは付き物。時の流れと人の気持ちは移り変わるもの。でも今まで頑張ってやってきたんだ。強引にMy Way...

”カモン!人生”という言葉に象徴されるように常に前を向く自分であれと励ましてくれる曲。
10.星の河

我が子をいとおしく想う気持ちが滲んだ傑作。

この曲は仮録音のテイクを使った。他のテイクより一番気持ちが安らぐ音になっていた。

その音は車で聴いていたら、助手席の人があまりの気持ち良さにすやすや眠ってしまったくらい落ち着いた気持ちにさせてくれる。
ジャケットについて

ジャケットの粘土細工を作成したのはヒデさんの妹である千恵美ちゃん。人形のかわいさもいいが、なんといってもステージ上の演奏者の人形が気持ちよさそうに弾いている感じが出ていてうれしい限りであります。
KAMINが思った事

TELで”レコーディング覗かせてくれない”といったらヒデさんは”見たい?いいよ。”と快諾してくれた。レコーディングの場に自分がいた事を感謝します。

レコーディングに同行して思った事は、”人の出会いは大切だな”という事。ミュージシャンやエンジニアの人の気遣いも実際に触れる事が出来た。みんな口数は多くないし、あまりしゃべっても影響があっては困ると思い、後ろでじっと座っているのがほとんどでしたけど、張り詰めた緊張を和らげようとする周りの気持ちは伝わってきました。

皆歌心がある人達でした。それがないとこのアルバムは出来上がっていない。音に対するこだわりだけでなく、歌詞の一つ一つを頭にめぐらせてイメージを浮かべてアイデアが出てくる現場に、”まだ自分の聴き方は甘いな”と痛感させられました。

ヒデさんのように一人でギターを弾いて歌う時とバンドで演奏する時とのイメージのギャップが少ないのも他ではなかなかない事。それだけミュージシャンの曲に対する想いというのも感じ取れる。

そして、このアルバムがその時の”旬”な音であるという事。時がそこに押し留めてはくれない。だからこそ今の音が聴きたい。ライブに行こう!!
KAMINの余談

ミックスダウン時に”良かったらギター持っておいでよ”の一声についのせられた私は車にギターをちょいと乗せていったら、”一緒に歌でも歌おうや”とベースの村上氏と3人でナツメロのオンパレードと相成りました。レコーディング時の緊張感とは違い、”襟裳岬”や”ガッチャマン”など子供のころを思い出しながらはしゃぎながら歌ってた。寒い冬の一時、心温まるいい想い出となりました。
 

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