独断的JAZZ批評 852.

PAT METHENY UNITY GROUP
ORCHESTRIONという生楽器の自動演奏装置を駆使して、オーケストラ、あるいは、ビッグバンドに相当するスケールの大きな演奏に仕上がっている
"KIN (↔)"
PAT METHENY(electric & acoustic guitars, guitar synth, electronics, synths, orchestrionics), CHRIS POTTER(tenor sax, bass clarinet, soprano sax, clarinet, alto flute, bass flute), BEN WILLIAMS(acoustic & electric basses), ANTONIO SANCHEZ(ds & cajon), GIULIO CARMASSI(piano, trumpet, trombone, french horn, cello, vibes, clarinet, flute, recorder, alto sax, wurlitzer, whistling, vocals)
2013年6月 スタジオ録音 (NONESUCH : 7559-79581-0)


PAT METHENYの前作は"UNITY BAND"とタイトルだったけど、本アルバムでは"UNITY GROUP"と名称を変えている。バンド(楽団)からグループ(集団)への変更は何を意味するのだろう?
兎に角、取り扱う楽器の種類が凄い。これにシンセサイザーやオーケストリオンが加わるので、5人と言ってもオーケストラ、あるいは、ビッグバンド並みのサウンドになっている。
今回はマルチ奏者のGIULIO CARMASSIが増えた。この人の取り扱う楽器の種類が凄い。完全なマルチ・プレイヤーだ。
そして全員が一つの楽器に固執することなく色々な楽器にチャレンジしているところもポイントかもしれない。ORCHESTRION TECHNICIANとしても二人の名前が記してあるので、ORCHESTRIONも随所に使用しているのだろう。

①"ONE DAY ONE" イントロからベースが定型パターンを刻むようになると、これが変拍子!難しいリズムだ。数えないことだね。この変拍子が僕は苦手で生理的に心地よくない。1拍足りないような多いような・・・。演奏自体は見事に統率されていてオーケストラを聴いているよう・・・と思えば、コンボ演奏を聴いているような瞬間も訪れる。曲の最後にヴォイスが入るが、これが前掲の"AS FALLS WICHITA, SO FALLS WICHITA FALLS"(JAZZ批評 851.)の記憶を呼び起こしたという次第だ。15分15秒。
②"RISE UP" 
この演奏も35年前のPMG(PAT METHENY GROUP)によく見られたパターンだ。しかし、この音の壮大さは5人のコンボのそれではない。明らかにORCHESTRIONを使用しているでしょう。12分。
③"ADAGIA" 
インタールード的な2分15秒。
④"SIGN OF THE SEASON" 
同じようなパターンで壮大な音楽を作り上げていくが、途中、中弛み。これも長尺の10分15秒。
⑤"KIN(↔)" 
高速なリズムを刻む一方でゆったりとしたテーマが続く。複雑にして緊張感溢れる演奏だ。熱気を帯びたプレイだが、見事にコントロールされている。そして、ORCHESTRIONを利用した壮大な音場が出現する。SANCHEZのドラミングも聴きどころ。11分5秒。
⑥"BORN" 
美しい牧歌的なバラード。METHENYの傑作アルバム"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 686.)の中に入っている曲、"SPIRITUAL"に良く似ている曲だ。徐々に高揚感を増していき壮大なクライマックスを迎えて終わる。7分50秒。
⑦"GENEALOGY" 
⑧へのインタールード。38秒。
⑧"WE GO ON" 
先ず、テーマがいいね。一度聴くと口ずさみたくなる分かり易いテーマだ。5分30秒。
⑨"KQU" 
5分25秒。

ここにあるのは5人編成というコンボの音楽ではない。ORCHESTRIONという生楽器の自動演奏装置を駆使して、オーケストラ、あるいは、ビッグバンドに相当するスケールの大きな演奏に仕上がっている。同時に、万華鏡のようなサウンドと言うことも出来るだろう。
で、このことは僕の嗜好とは異にする部分でもある。電子機器を駆使したオーケストラのような壮大な音楽を聴きたいと思っていたわけでもない。むしろ、5人というコンボの演奏スタイルを期待していた。
先に紹介した"WICHITA FALLS"(JAZZ批評 851.)と比較すると"WICHITA FALLS"の方が僕の好みだ。シンセやオーバーダビングを駆使した3人のサウンドで十分。ここまでの音符過剰は好みとするところではない。従って、本アルバムは非常に聴き疲れする。
今回、このレビューのために何回も聴いたが、もう暫くは聴きたくないという心境だ。だからと言って、本アルバムが駄作だとは思っていないし、むしろ、傑作に類するアルバムだと思っている。単に、僕の求める方向と違うということかも知れない。   (2014.02.16)

試聴サイト : http://www.nonesuch.com/albums/kin
          http://www.youtube.com/watch?v=cgUxjhBHN3g 



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