独断的JAZZ批評 833.

JOE HAIDER TRIO
酸いも甘いも噛み分けた70代トリオの味
"A MOMENT IN MONTREUX"
JOE HAIDER(p), ISLA ECKINGER(b), JIMMY WORMWORTH(ds)
2012年12月 スタジオ録音 (SOUND HILLS : SSCD-8144)


ドイツのベテラン・ピアニスト・JOE HAIDERは1935年生まれの78歳。この歳になっても現役で新しいアルバムを提供できるのは大したものだ。一般世間では78歳にもなると大概、隠居生活だ。今回のアルバムでは同じ年頃のベテラン勢を揃えた。ベースのECKINGERは1939年生まれだし、ドラムスのWORMWORTHは1937年生まれだ。
以前のアルバム、"A SUNDAY IN SWITZERLAND"(JAZZ批評 218.)では若手のサポート陣だったから、今回は真逆の組み合わせになった。
HAIDERは自分のレコード会社まで持ってるピアニストだったが、先のアルバムを最後にレコードの更新がされていないところを見ると、もう止めているのかもしれない。因みに、このCDはSOUND HILLSからのリリースとなっている。
全8曲中、6曲が聞古されたスタンダード・ナンバー。はて、どんな風に料理してくれるのだろうか?

@"ALL OF YOU" 最初、少しモタモタした印象があるが、徐々に軽快な4ビートを刻みだす。
A"A MOMENT IN MONTREUX" 
ブラシ捌きがいいね。いい音色だ。ベースも太くて力強い響きで良く歌っている。ここまでの2曲、もう少しテンポが速ければ良かったという印象。
B"COME RAIN COME SHINE" 
テーマ後のミディアム・テンポの4ビートがズンズン、ビシビシで実に心地よい。ピアノも楽しげによく歌っている。
C"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" 
この曲というと、僕の中では本田竹広の"THIS IS HONDA"(JAZZ批評 386.)の熱くて激しい演奏を思い出す。併せて、是非、聴いてもらいたいアルバムだ。
D"SOME OTHER BLUES" 
J. COLTRANEの曲で、先のアルバムでも演奏されているところを見るとHAIDERのお気に入りなのかもしれない。
E"DEAR OLD STOCKHOLM" 
シンバル・レガートでチンチキチンチキと4ビートを刻む音が大好き!これだけで幸せな気分になれる。これこそドラマーの一番大切な技だと僕は思っている。良いドラマーは皆これが上手い。10分にも及ぶ長尺で、ベースにもドラムスにも長目のソロの時間を与えている。二人とも流石にベテランの味で良く歌っている。
F"I SHOULD CARE" 
2ビートのバラード。ここでもシンバル・レガートが効いていいるなあ!WORMWORTHのドラミングは奇を衒わず、堅実に乗せる術を知っている。若手のドラマーもこういうのを見習ってほしいね。何も手数が多ければ良いっていうもんじゃない。
G"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC"
 王道をいく4ビート。ベースがズンズンとウォーキング、ドラムスの「おかず」の加減も適当でいいね。これならピアノも安心して乗れるというものだ。

一言で言うと「酸いも甘いも噛み分けたベテランの味」だろうか?
3人が皆、70歳代のベテラン・プレイヤー。聞古されたスタンダード・ナンバーを何の衒いもなく正々堂々と取り組んでいるところがいいではないか!
これが若手だと、スタンダードをひととは同じにはやりたくないと思うのか、変拍子をやってみたり、奇を衒ったアレンジを加えたりするものだ。その点、ベテランはそんな小手先の小細工をしないところがいいね。
派手さはないが淡々と気負いなく演奏している姿が気持ち良い。こういうアルバムはいつ聴いてもホッとさせてくれる。   (2013.11.14)

参考サイト : http://www.youtube.com/watch?v=3950HNGL02s



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