独断的JAZZ批評 819.

CHRISTIAN McBRIDE TRIO
ピアノ・トリオというよりもベース・トリオの趣の方が強くなってしまった
"OUT HERE"
CHRISTIAN SANDS(p), CHRISTIAN McBRIDE(b),
ULYSSES OWENS, JR.(ds)
2013年8月リリース スタジオ録音 (MACK AVENUE : MAC 1069)


CHRISTIAN McBRIDEのアルバムは6月に"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 811.)を紹介している。現代アメリカの黒人ミュージックという趣があるものの、もう一つ心に響かないアルバムだった。その時のメンバーからピックアップされたのがこのトリオ。ピアノには若手のCHRISTIAN SANDSが参加している。
McBRIDEと言えば、現代アメリカのNO.1黒人ベーシストと言えるだろうし、REY BROWNの後継者とみなすこともできるだろう。剛腕ぶりに加え繊細なプレイもできる硬軟両様のベーシストと言えるだろう。

@"HAM HOCKS AND CABBAGE" McBRIDEとSANDSのグルーブ感溢れるオリジナル。アドリブではミディアム・テンポの12小節のブルースになっている。
A"HALLELUJAH TIME" 
アドリブでは高速の4ビートを刻んで進む。「そこのけそこのけお馬が通る」式のMcBRIDEのベース・ワークが他を圧倒する。高速アルコも披露している。
B"I GUESS I'LL HAVE TO FORGET" 
一転してボサノバタッチのMcBRIDEのオリジナル。
C"EASY WALKER" 
かつてLARRY FULLERとRAY BROWN(b)が"EASY WALKER"(JAZZ批評 286.)の中で同名曲を演奏しているが、それを意識したものだろうか?超弩級重量ベースのウォーキングを楽しむことが出来る。
D"MY FAVOURITE THINGS" 
数多くのジャズ・プレイヤーが取り上げてきた曲だけに、一捻り、二捻りしたくなったのだろう。アレンジにも凝って、変拍子ときた。原曲の良さが損なわれてしまった印象の方が強い。
E"EAST OF THE SUN (AND WEST OF THE MOON)" 
ベースがソロを執る。概して黒人ベーシストは音程の怪しいプレイヤーが多いが、流石に正確な音程で安定感がある。
F"CHEROKEE" 
超高速アップ・テンポとテンポ・ダウンが交互にやってくる。これもアレンジに凝り過ぎた。何ともせわしない演奏で味も素っ気もないね。
G"I HAVE DREAMED" McBRIDE
アルコも上手い。いい音色だ!しっとりとしたバラード。
H"WHO'S MAKING LOVE" 
最後はノリの良い8ビートで終わる。いかにも黒人ミュージシャンが好みそうなヘヴィーな演奏だが、こういう演奏をエレキ・ベースでなく、アコースティック・ベースでやってしまうってとこが凄いね。ついでに歌まで歌っているけど、これはご愛嬌でしょう!

McBRIDEの超弩級重量ベースに対抗するには若手のSANDSでは少々荷が重かっただろうか?ましてや、このアルバムはMcBRIDEのリーダー・アルバムなので、ピアノ・トリオというよりもベース・トリオの趣の方が強くなってしまった。それと、DやFはアレンジに凝り過ぎて、原曲の良さが失われてしまったのも残念。
CHICK COREAがこのMcBRIDEとBRIAN BLADEとトリオを組んだアルバム"TRILOGY"が入手できたので、次回紹介したいと思うが、COREAクラスにならないとこの剛腕ベーシストをコントロールするのは難しいかもしれない。   (2013.09.12)

試聴サイト : http://www.allmusic.com/album/out-here-mw0002549026



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