独断的JAZZ批評 800.

ENRICO PIERANUNZI
旧友の再会
"LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD"
ENRICO PIERANUNZI(p), MARC JOHNSON(b), PAUL MOTIAN(ds)
2010年7月 ライヴ録音 (CAMJAZZ : CAMJ 7857-2)


ENRICO PIERANUNZIのアルバムとしては12枚目にあたる。前回紹介したアルバムは2009年11月録音の"PERMUTATION"(JAZZ批評 746.)で当時のニューヨークを代表するサポートを得たアルバムだった。それによって音楽自体も大きく変わった。それが良かったかというと僕にとってはクエスチョンだった。
今回のアルバムは、その1年後の2010年に旧友のMARC JOHNSONとPAUL MOTIANというメンバーによる演奏で古巣に帰ったという印象だ。MOTIANはその1年後には亡くなっているのでラスト・レコーディングに近いのではないか?
僕の手持ち11枚の中で、このアルバムと同じメンバーなのは1996年録音の"THE NIGHT GONE BY"(JAZZ批評 141.)で、それ以来ということになる。

@"I MEAN YOU" T. MONKの曲だから一癖も二癖もある。好き嫌いの分かれるところだが、MOTIANのドラムスは前に進まないというかドライヴ感がないというか、僕にはまだるっこしい。
A"TALES FROM THE UNEXPECTED" 
ヨーロッピアン・テイストのPIERANUNZIのオリジナル。
B"PENSIVE FRAGMENTS" 
フリー・テンポのバラードからベースのソロへと移行していく。内省的で叙情的な演奏に終始する。
C"MY FUNNY VALENTINE" 
これもフリー・テンポのピアノで始まり、徐々にイン・テンポにシフトしていく。ベース・ソロの後、ピアノのうねる演奏が聴けるのだが、白熱した躍動感というところまでは登り詰めない。ドラム・ソロを経由してテーマに戻る。
D"FELLINI'S WALTZ" 
哀愁を帯びたオリジナルのワルツ。PIERANUNZIのオリジナルに共通しているのは美しくて哀愁を帯びている曲想だろう。
E"SUBCONSCIOUS LEE" 
L. KONITZのオリジナル。これも一癖も二癖もあるテーマ。ジャズらしいと言えばジャズらしい。
F"UNLESS THEY LOVE YOU" 
PIERANUNZIのオリジナルは全てバラード調だ。いい曲だとは思うけど、アドリブでは躍動感あふれる白熱した演奏を期待したいところだ。
G"LA DOLE VITA"
 ピアノの抒情的なイントロで始まる。11分を超える長尺。途中、倍テンやらアブストラクト風な味付けやらをして最後は盛り上がって終わるが、少々弾き過ぎの感じも否めない。

PIERANUNZIの数あるアルバムの中で、僕がベストの組み合わせを選ぶとすれば、ベースにHEIN VAN DE GEYN、ドラムスにANDRE DEDE CECCARELLIというトリオだろうか。
"SEAWARD"(JAZZ批評 352.)、及び、"LIVE IN PARIS"(JAZZ批評 324.)はクライマックスでの白熱した演奏が聴きものだ。めくるめく、そして、うねるような躍動感が魅力だった。
翻って、このアルバムでは旧友の再会という趣ではあるが、躍動感あふれる演奏が聴けなかったのが残念。
前アルバム"PERMUTATION"(JAZZ批評 746.)では"NEW AMERICAN TRIO"と銘打っていたのだけど、あのメンバーはどこに行ってしまったのだろう?最新情報では9月に来日ツアーが予定されているようで、そのメンバーがBRAD MEHLDAU TRIOのサイドメン、すなわち、LARRY GRENADIER(b)とJEFF BALLARD(ds)というから驚きだ!これは是非、聴きに行きたい!   (2013.04.19)

試聴サイト : http://www.camjazz.com/home/8052405140883-enrico
-pieranunzi-live-at-the-village-vanguard-cd.html




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