独断的JAZZ批評 692.

JESSICA WILLIAMS
JESSICAおばさんの才能を余すところなく伝えるアルバム
"FREEDOM TRANE"
JESSICA WILLIAMS(p), DAVE CAPTEIN(b), MEL BROWN(ds),
2007年12月 スタジオ録音 (ORIGIN RECORDS : ORIGIN 82589)


JESSICA WILLIAMSのアルバムは今までに2003年録音の"LIVE AT YOSHI'S"(JAZZ批評 
220.)の1枚を紹介している。鮨屋でジャズという、日本ではちょっと考えにくいシチュエーションでのライヴ盤だった。内容的にはとても好感の持てるアルバムで聴きこむほどにジンワリとそのよさが染み出てくるようなアルバムだった。
今回のアルバムはタイトルに"FREEDOM TRANE"とあるようにJOHN COLTRANEを意識したアルバム、あるいは、トリビュート・アルバムであることは間違いないだろう。全8曲中、
COLTRANEの書いた曲が4曲WILLIAMS自身の曲が4曲と半々になっている。

@"THE SEEKER" 少々大げさなイントロでスタートするWILLIAMSのオリジナル。いかにもモード奏法という感じの演奏だが・・・。テンション高めに弾きまくるWILLIAMSのプレイは切れがあっていいと思う。なかなかグルーヴィな演奏だ。
A"LONNIE'S LAMENT" この曲もフリー・テンポのイントロから始まる。地味だけどCAPTEINとBROWNのバック・アップは上手くピアノを引き立てている。いい雰囲気を醸し出しているなあ。キラキラと煌きながらも芯のしっかりとしたピアノの音色は素晴らしい。いい録音だ。
B"FREEDOM TRANE" 
このピアノ・トリオはピアノのワンマン・トリオという色彩が強い。ベースとドラムスはあくまでも脇役に徹している。その分、アンサンブルのよさが光っている。
C"PAUL'S PAL" この曲はCOLTRANEとSONNY ROLLINSとの競作らしい。とてもいい曲だ。この曲ではWILLIAMSの左手によるバッキングが印象的。饒舌気味な右手とのコントラストが素晴らしい。
D"PRAYER AND MEDITATION" 
これもフリー・テンポのイントロで始まる。WILLIAMSはこういうパターンがお好きなようで・・・。テーマに入るとしっとりとしたバラード演奏になる。
E"JUST WORDS" 
アドリブに入るとミディアム・テンポの4ビートを刻んでいく。安定したサポートを背景にWILLIAMSが楽しそうに遊んでいる。まあ、指でも鳴らしながら楽しみましょう!ここではCAPTEINのベース・ソロがフィーチャーされている。
F"NAIMA" 
G"WELCOME" 
最後はピアノ・ソロで切々と歌うリリカルな演奏。

どちらかというとピアノのワンマン・トリオという色彩が強い。ベースとドラムスはピアノのサポート役に徹しているのでほとんど自己主張できる場面はない。しかし、アルバム全体の質感は素晴らしいものがあり、これはこれでありなんだと思う。
確かに、鮨屋のジャズよりはズーット楽しんで聴けるのではないだろうか。録音時には59歳だったJESSICAおばさんの才能を余すところなく伝えるアルバムとして、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.05.12)


試聴サイト : http://www.jessicawilliams.com/shop.html



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