DARIO CARNOVALE
トリオとしてのバランスも良いし、これからさらに熟成していったら面白い存在になるのではないだろうか?
"EXIT FOR THREE"
DARIO CARNOVALE(p), YURI GOLOUBEV(b), LUCA COLUSSI(ds)
2008年4月 スタジオ録音 (ALBORE : ALBSP 002)

DARIO CARNOVALEのアルバムは2007年録音の"PENSIERI NOTTURNI"(JAZZ批評 658.)を3ヶ月前に紹介したばかりだ。そのときに「ドラムスとの相性は良さそうなので、次はベーシストを替えたトリオでのスタジオ録音盤を聴いてみたいと思った」と書いたのであるが、そのことが現実になったのがこのアルバム。ベーシストがSIMONE SERAFINIからYURI GOLOUBEVに交替している。しかも、スタジオ録音だ。前回のアルバムから1年と3ヵ月後の録音となっている。
全曲オリジナルで、BとKをベースのGOLOUBEVが提供している以外はすべてCARNOVALEのオリジナルとなっている。


@"GERICO"
 美しいベースのアルコがフィーチャーされたイントロ的なトラック。
A"FLORES"
 美しいピアノのテーマに絡みつくようにベースが躍動する。アコースティックないい音色だ。このGOLOUBEVは相当のテクニシャン。少々弾きすぎの嫌いがある。CARNOVALEのピアノはENRICO PIERANUNZIにも通ずるイタリアン・リリカルといった風情だ。甘いだけでなく徐々に高揚感を増してきてハードな演奏へとシフトしていく。
B"NO, IT ISN'T"
 ベースのGOLOUBEVの書いた曲。ロシアの「国民名誉芸術家」にベーシストとしては歴代最年少で選出された経歴の持ち主。クラッシクを素養にテクニックを磨いてきたようだ。
C"AFORISMA"
 ピアノによる間奏曲。
D"EXIT FOR THREE"
 激しく高揚していくが、どこか無機質な感じ。
E"CAFARNAO"
 GOLOUBEVは巧みにアルコとピチカートを使い分けているが、ピチカートになると弾き過ぎの傾向が頭をもたげる。EDDIE GOMEZみたいになってしまうのが残念だ。
F"PRKFV"
 抽象色の強いピアノとドラムスのデュオ。
G"TONY"
 一転して、美しいバラード。饒舌多弁、弾き過ぎのベース・ソロが惜しい。
H"PRAGA SUD" 抽象色の強いピアノ・ソロ。
I"PRAGA NORD" 
今度はリリカル色の強いトリオ演奏。リリカルな曲にはGOLOUBEVのベース・ソロっていうパターンなのかな?
J"NAVI" 
K"EVENTUAL THOUGHT" 
ドラムスが繊細なシンバリングを施し、ベースとピアノが絡む多ビートの演奏。
L"FLORES REVISTED"
 

このアルバムのDARIOは前回のアルバム、"PENSIERI NOTTURNI"に比べて音数が大分減った。饒舌という感じはしない。テンション高めのライヴ録音からスタジオ録音に変わったということも影響しているだろう。同時に、ベーシストの交替でベースは数段良くなった。クラッシクの薫陶を得たアルコはまさに一級品。逆に、ピチカート奏法で少々弾きすぎになってしまうのはテクニシャンの陥る罠かも知れない。しかし、トリオとしてのバランスも良いし、これからさらに熟成していったら面白い存在になるのではないだろうか?
このアルバム、完全初回限定スペシャルプライスという但し書き付でわずか1000円で買える格安アルバムなのだからそうそう文句も言ってられない。   (2011.01.18)

試聴サイト :  http://www.myspace.com/dariocarnovale



独断的JAZZ批評 675.