1960年代のワンホーン・カルテットはこのレコード(CD)を抜いて語れない。

咆哮とも絶叫とも鎮魂ともいえるアルトサックスの絶唱を聴け!。
PHIL WOODS
"ALIVE AND WELL IN PARI"PHILWOODS(as), GEORGE GRUNTZ(p),
HENRI TEXIER(b), DANIEL HUMAIR(ds) 1968年録音

JAZZ批評 51.のBOOKER ERVIN を聴いているうちに、この時代のワンホーン・カルテットの代表作をどうしても聴きたくなった。HMVに慌ててオーダーをいれて手に入れたヨーロピアン・リズムマシンの1968年録音の大傑作。
フィル・ウッズの代表作であると同時に、アルトサックスのワンホーン・カルテットの代表作でもある。

まずは聴いてい欲しい。ウッズの咆哮とも、絶叫とも、鎮魂とも言える演奏を。ウッズだけでなくリズムセクションも絶好調。全体のバランスがとても優れているし、お互いがインスパイアし合って密度の高い濃厚なプレイを演じている。
良く聴くと結構細かな約束事があるが、上手にアレンジメントされているのでそれと気付かない。しかし、このレコードはそういう細部にこだわらず、流れ出てくる音楽を思う存分楽しんだらいいと思う。満足すること、請け合いだ。

その第1曲目は凶弾に倒れたロバート・ケネディに捧げた曲だという、"AND WHEN WE ARE YOUNG"(邦題「若かりし日」) 。哀愁を帯びたメロディとウッズの咆哮とも、哀悼ともいえる絶唱が心を打つ。ウッズのアルトサックスはテーマの最初から泣かせてやまない。また、当時のヨーロッパの指折りのプレイヤーを集めたリズムセクションは "RHYTHM MACHINE" というネーミングとは裏腹に心温まる血の通った演奏を繰り広げている。フリーなベースのソロは、インテンポになってから3者が合流するまでが特に面白い。

4曲目のオリバー・ネルソンの "STOLEN MOMENTS" はお奨めだ。まずテーマ演奏がいい。期待感がふつふつと湧いて来る。ウッズのアルト・サックスは思いっきり歌い上げているし、リズムセクションもご機嫌なスィング感を醸成していく。高揚感の高まりとともに、4ビートから倍テン(倍速テンポ)に推移していく。この辺のつなぎ方が実に巧み!
続く、グランツのピアノもスィンギーだし、ベースとのインタープレイも楽しい。倍テンからベースのフリーなソロへと移行していき、再び4人によるプレイに戻り、ドラムスのソロを経てテーマに戻る。ピアノ、ベース、ドラムスと誰も引けを取らないスィンギーな演奏に拍手!

残る3曲も楽しい。2曲目がウッズのオリジナルのタイトル曲 "ALIVE AND WELL" 、3曲目がエディ・ハリスの名曲 "FREEDOM JAZZ DANCE" 、最後の5曲目、ソニー・ロリンズ作のブルース "DOXY" で締めくくりという構成になっている。どの曲をとってもそれぞれに聴き応えのある演奏になっている。
多分、聴き終わって「満足、満足」と充足感に満ち足りていただけると思う。

1960年代のワンホーン・カルテットはこのレコードを抜いては語れない。(2002.02.15.)

<追記>
1960年代の傑作として "manaの厳選 PIANO TRIO & α" に追加しよう。何ヶ月経ってもまた聴きたくなる作品こそ大事にすべきだと思う。  (2002.05.25.)




独断的JAZZ批評 52.