HANK JONES (THE GREAT JAZZ TRIO)
「練習は、1日休めば自分に分かる
3日休めばカミさんが分かる、7日休めば仕事が無くなる」
がH. JONESの口癖だった
"BLUE MINOR"
HANK JONES(p), GEORGE MRAZ(b), BILLY KILSON(ds), KEIKO LEE(vocal on C),
TOKU(vocal & flugelhorn on G)
2008年9月 スタジオ録音 (EIGHTY- EIGHT'S : VRCL 18843)
HANK JONESがなくなったのは今月の16日だった。生まれたのが1918年7月31日というから享年91歳ということになる。このアルバムが吹き込まれたのが2008年9月。満90歳を超えてからの録音だ。僕の周辺にも90歳の爺さんというのはいるが、杖を突いて歩くのももどかしかったり、車椅子に座っていたりで、まともに歩ける爺さんは皆無だ。ましてや、ピアノを弾いてアドリブまで弾きこなす爺さんなんているわけがない。そういう中、90歳のJONESは現役バリバリでこのCDを残した。さらには、今年の2月には来日ツアーを敢行している。何というタフガイ!
@"NICA'S DREAM" まずピアノの音色が瑞々しい。良い録音だ。少し肌合いの違うKILSONのドラミングがアクセントになっている。
A"DEAR OLD STOCKHOLM" アルバムのクレジットでは作曲者がSTAN GETZとなっているが、これはどこかの国の民謡ではなかった?ストックホルムといえば、スウェーデン民謡かなあ?ゆったりとしたテンポで弾くJONESのピアノに気負いや受け狙いのコケオドシ的プレイもない。しかし、枯れてはいない。十分に瑞々しいプレイだ。後に続くMRAZのプレイも堅実で頼もしい。
B"LONELY MOMENTS" 軽快なピアノ・タッチで始まるが後半にKILSONの小気味良いドラム・ソロが用意されている。ピアノ・トリオではあまりなじみのドラマーだが、20年も前のMt.
FUJI JAZZ FESTIVALで来日しているし、最近ではベースのDAVE HOLLANDとの競演暦がある。YouTubeで探すと迫力満点のドラミングを聴くことができるので参考まで。
C"I LEFT A SONG GO OUT MY HEART" KEIKO LEEが参加。
D"BLUE MINOR" SONNY CLARKの書いた名曲。MRAZのソロでバックアップするJONESのバッキングが素晴らしい。ここでもKILSONの小気味良いドラムスが聴ける。
E"COMIN' HOME BABY" なんかとても懐かしさがこみ上げてくる曲だ。久しぶりに聴いた。
F"WAVE" JOBINの代表作もこのJONESにかかれば波に乗っている心地よさを満喫できる。しかし、これが90歳の爺さんの弾くピアノとは!最後にKILSONがノリノリのドラミングを披露してくれる。このトリオにはすこしアンマッチと思わせるくらいの切れと迫力のドラミングがアクセント・ポイントだ。
G"MY IDEAL" この曲ではTOKUがヴォーカルとフリューゲルホンを披露している。TOKUのヴォーカルもホーンも初めて聴くけど、味があるねえ。ヴォーカルは捨て置けない雰囲気を持っている。男性ヴォーカルなんて聴いたこともないし聴きたいと思ったこともないけど、このヴォーカルはいいね。何回も繰り返して聴きたくなる。僕はYouTubeでTOKUのヴォーカルを探して、暫し聴き入ってしまった。
H"I GOT RHYTHM" KILSONのシンバリングに乗ってMRAZが唸り、JONESが踊る。そう、これが良いのだ。
I"MISTY" ピアノ・ソロ。ジャズの全てを知り尽くしたJONESのピアノがここにある。
H. JONESといえば、1958年録音のCANNONBALL ADDERLEYの"SOMETHIN' ELSE"(JAZZ批評 145.)が代表作としてすぐさま思い浮かぶ。それから半世紀にわたりジャズを牽引してきた。90歳になっても、指と感性の衰えを全く感じさせない瑞々しいプレイに拍手。
「練習は1日休めば自分に分かる。3日休めばカミさんが分かる、7日休めば仕事がなくなる」が口癖だったという。練習の虫だったのだろう。だからこそ半世紀にわたってジャズの第一線で常に活躍し続けてこれたのだろう。全てのジャズ・メンのお手本ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。冥福を祈りたい。 (2010.05.29)
試聴サイト : http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=3729&cd=VRCL000018843
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