JUNKO MORIYA
どうしても無機質な匂いを感じてしまうのだ
"THREE AND FOUR"
守屋 純子(p), SEAN SMITH(b), BILL STEWART(ds)
2009年10月 スタジオ録音 (SPICE OF LIFE : SOL JP-0011)
南博の"LIKE SOMEONE IN LOVE"(JAZZ批評 619.)で書いたのだが、南の書いたエッセイ「白鍵と黒鍵の間に−ピアニスト・エレジー 銀座編」は抜群に面白かった、その続編ともいうべき「鍵盤上のU.S.A−ジャズピアニスト・エレジー アメリカ編」もバークリー音楽大学での生活ぶりが面白かった。軽妙な言い回しも手伝ってのめりこむように読んでしまった。
amazonで検索していたら、この守屋純子も本を書いている。タイトルが、「なぜ牛丼屋でジャズがかかっているのか?」という、いかにも思わせぶりで受けを狙ったタイトルではある。中身はタイトルほどのインパクトはなくてジャズの入門書、あるいは、指南書とも言うべき内容で、音楽を愛してやまない守屋の愛情が注がれている本であった。
本題に移ろう。このアルバムは守屋純子の初めてのピアノ・トリオ・アルバムであるらしい。しかも、E、F、Iの3曲を除く全7曲が守屋のオリジナルという意欲作だ。
@"THREE AND FOUR" 最初の何小節かを聴けば、正直、うんざりしてくる。こういう無機的なテーマは好きではない。味も素っ気もないテーマにがっかりである。本人曰く、「このトリオの特徴と自身の作曲の特徴が一番色濃く出ている」そうで、だからタイトルにしたそうだ。これは、僕には受け入れ難い。これは目指す方向が全然違っているかも知れない。
A"A THOUSAND CRANES"
B"DEAR OSCAR"
C"IN FIVE"
D"PLAYGROUND" この曲は2005年度セロニアス・モンク作曲賞を受賞した曲だそうだ。かの「牛丼屋」の本の中にも盛んにこのことが出てくる。そりゃあ、そうだろう。その年度のベスト・ワンに選ばれた曲だもの。しかし、玄人受けはすることがあっても素人受けはしないのではないだろうか?僕としては、何も面白くない無機的な曲にしか聞えないのだ。
E"OVER THE RAINBOW" 一転、叙情的なピアノ・ソロ。
F"THINK OF ONE" T.MONKの書いた曲。MONKの曲には拘りがあるそうだ。そういえば、オリジナルと曲想が似ている。
G"DEPARTURE"
H"TEARDROP"
I"IT COULD HAPPEN TO YOU"
DUKE ELLINGTONは「音楽にジャンルはない。あるのは良い音楽と悪い音楽だけだ」といったというが、その観点からすれば、このアルバムは間違いなく良い音楽だと思う。しかし、良い音楽、イコール楽しい音楽とは限らない。僕はこのアルバムを何回も聴こうとしたのだが、毎回あまり気が進まなかった。なんていうのかなあ・・・。「すきがない」とでも言うのだろうか?少々窮屈なのだ。疲れるのだ。体力と気力が充実しているときには良いかも知れないが、疲れているときにはさらに疲れが増幅しそうだ。
サイドメンについて触れておくとBILL STEWARTにいつもの輝きがないし、彼が紹介したというベースのSEAN
SMITHについては???という感じなのだ。
このアルバムは、基本的に僕が求めるピアノ・トリオの方向とは違うのかもしれない。どうしても無機質な匂いを感じてしまうのだ。
かの「牛丼屋」の本もそうで、生真面目でジャズに対する強い愛情というのは感じるのだけど、南博の著書に比べると面白さ、楽しさで雲泥の差がある。このアルバムも、「牛丼屋」の本も星3.5か4つがいい線だろう。多分、また聴きかえすということがありそうもないのと、迷ったときは厳しいほうの点数を採用することにしているので星3.5とした。・・・ということは、中古市場におさらばだ。 (2010.05.09)
試聴サイト : http://www.spiceoflife.co.jp/soljp_cd11_l.html