独断的JAZZ批評 610.

DAVID KIKOSKI
こんなKIKOSKIなら次に出るアルバムも聴いてみたいと思うもの!
"LIVE AT SMALLS"
DAVID KIKOSKI(p), HANS GLAWISCHNIG(b), OBED CALVAIRE(ds)
2008年11月 スタジオ録音 (SMALLS LIVE : SL-0003)


前掲のアルバムに続いてライヴ盤である。"LIVE AT SMALLS"というくらいだから小さなライヴ・ハウスなのだろう。大きいコンサート・ホールのライヴというのは聴衆にとっても他人行儀になりがちだ。興行的には大きいホールで満員になるというのが望ましいのだろうけど、聴衆にとってはもうひとつという感じを持ってしまう。やはり、ジャズは小さなライヴ・ハウスで少しアルコールも入った状態でテンション高くして聴きたいというのはジャズ・ファンの共通した願いだろう。多分の、この"SMALLS"はそういう雰囲気のライヴ・ハウスなのだと思う。
ところがである、このCD、評判通りに録音が悪い。3つの楽器がオフ気味で臨場感というものが伝わってこない。僕は、DAVID KIKOSKIとしては会心のプレイだと思うのだ。残念ながら、録音が悪くてその素晴らしさを十二分に伝え切れていないと思うのだ。これは惜しい!
特に前掲のアルバム、"SOMEDAY. LIVE IN JAPAN"(JAZZ批評 609.)の録音と比べると、そのことが決定的なマイナス点となって表れてしまうのだ。だが、このライヴに居合わせた聴衆には満足度の高い演奏だったのではないかと推察する次第だ。
このCD、ライヴだけあって1曲の演奏時間が長い。最短が@の10分と10秒で、最長が13分41秒のDという具合だ。たった5曲で60分近い演奏時間だ。心して聴いて欲しい。

@"INNER URGE" 
いきなりハード・タッチで攻めるKIKOSKIのピアノがいいねえ。もう少し生々しく録れていれば最高だった。反して、CALVAIREのドラミングはうるさいほどに録れている。その点、録音バランスが悪いと言わざるを得ない。一方、ベースのGLAWISCHNIGはよく歌っておりグルーヴィだ。実際のライヴではどうだったのか分からないが、これはテンションも高く躍動しており、ライヴ演奏としてはやんやの喝采でもおかしくないと思うけど・・・。
A"DIRTY DOGS" 
僕にとっては初めて聴くベーシストだと思うけど、このHANS GLAWISCHNIGのベース・ワークは印象に残る。KIKOSKIのけんれみのないプレイも良いね。
B"BILLIE'S BOUNCE" 
言わずと知れたC. PARKERの書いたブルース。ブラシの心地よい4ビートに乗ってピアノが歌い、ベースも歌う。KIKOSKIのバッキングもグッドだ。続いて、ドラムスとの12小節交換を経てテーマに戻る。
C"7/4 BALLAD" 
変拍子とは思わせない自然なアドリブ。あえて数えないことだね。
D"GREY AREAS" 
A、Cに次ぐKIKOSKIのオリジナル。ベース・ソロで始まるグルーヴィな楽曲。このアルバム中、もっとも長い13分と41秒だが、緊迫感溢れる演奏で長い演奏でも中弛みしない。

かつて、KIKOSKIのアルバムとしては2003年録音の"DETAILS"(JAZZ批評 205.)を紹介している。ベースにL. GRENADIER、ドラムスにB. STEWARTという最強のメンバーを擁しながら、その評価は星3.5で結果的に中古市場へ売り飛ばしてしまった。そのときのアルバムと比べるとKIKOSKIの出来が素晴らしく良い。迷いがないという感じがするし、一皮剥けたなあという感じがした。
まあ、録音は良くないけれど演奏は良いので結構聴ける。逆に、録音が良いのに演奏が悪いのでは話にならない。そういう意味では未だ救われている。なぜなら、こんなKIKOSKIなら次に出るアルバムも聴いてみたいと思うもの!だから、星4.5を点けた。   (2010.03.02)


試聴サイト :
http://www.smallslive.com/inner.cfm?siteid=372&itemcategory=37888&priorId=0&ProductId=27546