MAGNUS HJORTH
SOMETHING OLD, SOMETHING NEW, SOMETHING BORROWED, SOMETHING BLUE
"OLD NEW BORROWED BLUE"
MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), SNORRE KIRK(ds)
2008年9月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS : STUCD 09032)

MAGNUS HJORTHは成長著しいデンマークの若手ピアニストだ。未だ25歳という若さだ。リーダー・アルバムとしては2006年録音の"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)を紹介しているが、このアルバムは将来の飛躍を予感させる出来であった。コロコロと珠のように転がる右手、表現力豊かな左手の組み合わせでありながら硬派の匂いがプンプンとするアルバムだった。
その3ヵ月後にはJASPER HOIBY(b)がリーダとなったPHRONESISの"ORGANIC WARFARE"(JAZZ批評 541.)を録音している。いずれ劣らぬ傑作だ。
そのMAGNUS HJORTHが"LOCO MOTIF"と同じメンバーで2008年に吹き込んだのがこのアルバムだ。このアルバムのタイトル"OLD NEW BORROWED BLUE"は"SOMETHING OLD, SOMETHING NEW, SOMETHING BORROWED, SOMETHING BLUE"という意味合いだ。新しきから古きまで、偉大な先人から拝借したアイディアやコンセプト、そしてブルースに根ざした曲まで色々な曲想と演奏スタイルにチャレンジしている。いわば、てんこ盛り状態なのだが、広く浅くという印象はない。どの曲も一旦、自分達の中で消化し、新に構築した新鮮さと深さがある。
全10曲中、HJORTHが7曲提供し、ドラムスのKIRKが1曲提供している。HJORTHのコンポーザーとしての才能にも目を向けたい。


@"QLOOSE" 
新しさと古さをない交ぜにしたような演奏だ。
A"BALLROOM STEPS" 
このピアニストの特筆すべき特徴としてタッチの美しさを挙げねばならないだろう。軽妙洒脱なテーマに美しい音色・・・。ウーン、やるねえ!
B"LET'S FACE THE MUSIC AND DANCE" 
高速パッセージも難なく弾きとおすその実力は凄い。
C"GOOD FRIDAY" 
HJORTHのオリジナル。少しひょうきんで茶目っ気のある曲。ELDHのベース・ソロはアコースティックないい音色だ。
D"THE MISTRESS" 
バラード。このピアニストの凄いところはこの若さで「」を持っていることだ。こういう美しいバラードでもきっちりと「」をもって弾いている。これって、いいピアニストの必要十分条件だ。
E"GUMBO" 
録音がいいからなのか、ピアノのタッチがいいからなのか、よく分からないが3人の奏でる音が分厚い。ときにオーケストラを聴いているようでもある。
F"STOMPING AT THE SAVOY"
 軽やかなピアノのタッチ、ヘヴィなベース。
G"BARBER RHETT" 
H"SUNDAY SERVICE"
 HJORTHのオリジナル・バラード。テーマの素晴らしさは勿論のこと、アドリブがまた素晴らしい。心行くまで美しいピアノのタッチを堪能いただきたい。これが25歳の弾くピアノかぁ!
I"MADHOUSE" 


STUNT RECORDSというのは今までに数々の傑作を世に送り出している。このレコード会社の凄いところはミュージシャンのやりたいようにやらせるところだ。今までに発売された傑作ピアノ・トリオだけをみても、STEFANO BOLLANI "MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.), "GLEDA"(JAZZ批評 264.)、CARSTEN DAHL "MOON WATER"(JAZZ批評 246.)、KASPER VILLAUME "117 DITMAS AVENUE"(JAZZ批評 243.)などなど・・・。最近ではKENNY WERNER "A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)なんていう傑作デュオもあった。いずれもミュージシャンの心意気が伝わってきた。
翻って、このアルバムもそうした1枚。HJORTHたちがやりたいようにやったらこうなった。若干、てんこ盛りという感じもしないでもないが、全ての演奏が味わい深く美しい。
才気に溢れた美しいピアノ・タッチを多くの人に聴いて欲しいと思いつつ「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.05.08)

試聴サイト : http://www.myspace.com/magnushjorthtrio



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独断的JAZZ批評 555.