OLIVIA TRUMMER
どちらが好きかといわれても選べない
"WESTWIND"とは双子みたいなアルバムだ
"NACH NORDEN"
OLIVIA TRUMMER(p), JOEL LOCHER(b), MARCEL GUSTKE(ds), LIBOR SIMA(ts:
C, F)
2006年4月 スタジオ録音 (NEU KLRNG : NCD4012)

OLIVIA TRUMMER。僕をもって、天が二物も三物も与えたと言わしめた才女だ。即ち、美人で性格が良くて(これは僕の想像だが)、さらに才能があるという具合だ。
2007年12月録音の"WESTWIND"(JAZZ批評 498.)はその有り余る才能を遺憾なく発揮した作品だ。ピアニストとして、コンポーザーとして、グループとしてその才能が開花していた。
このアルバム"NACH NORDEN"はそれを遡ること1年と8ヶ月前の録音。"WESTWIND"を聴いて、どうしてもこのアルバムを聴いてみたいと思った。
このアルバムをネット・ショップに発注したのが8月の下旬、そして、入荷したのが11月下旬とほぼ3ヶ月掛かったが、こういう欲しかったアルバムが手に入るのは嬉しいものだ。例え、3ヶ月掛かったとしても。そして、このアルバムは見事にその期待に応えてくれた。
前作では4曲にトランペット(or フルーゲルホーン)が参加しているのに対して、このアルバムでは2曲でテナーサックスが参加している。そして、全ての曲がTRUMMERのオリジナルでアレンジも全て自分でやっている。

@"ETERNAL DANCE" 
まずイントロのピアノのタッチが綺麗。和音のタッチに寸分の狂いもない。ベースは2ビート、ドラムスは多ビートという展開に乗って奏でるピアノのシングル・トーンのタッチが綺麗だ。後に続くベースのソロもグルーヴィだ。
A"LEAVING EARTH" 
B"ROSTOCK" 
バラード。こういう曲になるとタッチの美しさが際立つ。タッチが綺麗というのはいいピアニストの絶対条件みたいなもので、名を馳せたピアニストは皆、タッチが綺麗だ。BILL EVANS然り、KEITH JARRETT然り、CHICK COREA然り、BRAD MEHLDAU然り。
C"NACH NORDEN" テナーが加わったバラード。ピアノの音色が静寂に煌く星のよう。続くLOCHERのベースは良く歌っていてアコースティックないい音だ。このグループに絶対欠かせないベーシスト。
D"LAST TANGO" 
ピアノのブロック・コードによる演奏が瑞々しい。いやあ、このピアノの上手さには痺れるね。ベース・ソロでのバッキングも素晴らしい!
E"RESTLESS" 
CHICK COREAの曲のイントロにこんなのがあったような気がする。ピアノ・ソロ。
F"A HINT OF SORROW" 
G"A HINT OF SORROW - SOLOVERSION"
 瑞々しいピアノ・ソロ。

瑞々しいピアノ・タッチが印象的なアルバムだ。クリアな透明感の中に潜むグルーヴ感と躍動感。ドイツのグループの共通点だ。OLIVIA TRUMMERについて言えば、名ピアニストであり、名コンポーザーであり、名アレンジャーでもある。ここでも、天は三物を与えている。
先の"WESTWIND"と比較しても甲乙点け難い。どちらかを選べといわれても選べない。どちらが好きかといわれても選べない。双子みたいなアルバムだ。"WESTWIND"と比較して甲乙が点けれないとなれば、同様に、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加すべきだろう。
蛇足ながら、録音の良さも付け加えておこう。
今年、23歳になったばかりという才女はこれからどんな楽しみを与えてくれるのだろうか?   (2008.12.09)

参考サイト: http://www.myspace.com/oliviatrummer 



独断的JAZZ批評 517.