ELVIN JONES & RICHARD DAVIS
このアルバムは、「ジャズは体力だ!」といっていた時代の「筋肉質のジャズ」といえるだろう
"HEAVY SOUNDS"
FRANK FOSTER(ts), BILLY GREENE(p), RICHAR DAVIS(b), ELVIN JONES(ds, g)
1968年 スタジオ録音 (IMPULSE! UCCU-5144)
RICHAD DAVIS繋がりで往年の名盤を
こいつぁ、凄いぞ!ジャケットが全てを物語っている!
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35年も前の話だが、薄暗いジャズ喫茶ではこのジャケットがひときわ映えていた。チビたタバコをふかす二人の姿がグルーヴィな雰囲気を醸し出していて、出てくる音色を想像させたものだ。RICHAR DAVISと ELVIN JONESという当時きっての役者が揃い踏みというアルバムだ。ここにあるジャズはまさに"HEAVY
SOUNDS"というに相応しい。昨今のアルバムではこういう音色が聞けなくなった。録音技術と増幅技術が進歩したのか退歩したのか分からぬが、結果としてミュージシャンからパワーを奪った。とりわけ、テクニックに溺れ、電気的増幅に頼るようになったことにより楽器本来の音色が損なわれたことは間違いない。ベースについて言えば、強靭なピチカートで迫るベーシストが少なくなった。このRICHARD DAVISとかGEORGE TUCKER(HORACE PARLAN"US THREE"(JAZZ批評 115.))のように強靭なピチカートから生まれる躍動感でピアノをサポートするベーシストが本当に少なくなった。録音された音自体も当時のものは筋肉質だ。更には、ELVINのブラッシュワークの力強いこと!
このアルバムは、「ジャズは体力だ!」といっていた時代の「筋肉質のジャズ」といえるだろう。
@"RAUNCHY RITA" 先ずは、リズム陣の16小節のイントロで始まる。続いてFRANK FOSTERがテーマを奏でる。グルーヴィだ。"HEAVY
SOUNDS"に相応しい力強い演奏。'60年代の匂いを感じさせる演奏だ。「ウ〜ッ!タバコの煙が目に沁みる!」
A"SHINY STOCKINGS" @に続いてこの曲もFRANK FOSTEERの作曲だ。僕はこの曲が大好きだ。こういう雰囲気の曲はヨーロッパのプレイヤーにはなかなか書けないのではと思っている。ここでの演奏はピアノレス(ts,
b, ds)のトリオ演奏だ。実に味のある演奏で、この3人だから出来ることと思ってしまう。
ピアノ・トリオでは後藤小百合が女性らしいこまやかなピアノ・プレイをみせた名演(JAZZ批評 339.)があるので是非これも聴いてみてほしい。
B"M.E." ピアノのBILLY GREENEが書いた曲。大変調子のよい曲で一度覚えると耳から離れなくなる。
C"SUMMERTIME" ELVINとDAVISのデュオ。’60年代の演奏としてもベースとドラムスのデュオというのは珍しいのではないだろうか?DAVISはアルコ〜ピチカート〜アルコへと、ELVINもマレット〜ブラッシュ〜マレットへと並行して演奏スタイルを変えていく。この時代に、これだけのアルコを弾けたDAVISは本当に凄い。11分半の長尺。自由奔放のベース・ワークとドラミングを堪能頂きたい。
D"ELVIN'S GUITEAR BLUES" ELVINがギターを爪弾くブルース。
E"HERE'S THAT RAINY DAY" この曲のFOSTERのテナーは泣かせるね。良い音色だ。
ベースとドラムスのデュオやピアノレス・トリオの演奏があるというのは1960年代という時代を考えると相当、革新的だと思う。ELVINとDAVISという強烈な個性のガチンコ勝負だから出来たこととも思う。それと、テナーのFOSTERが良いねえ。
LP盤は随分前に手放してしまったのだが、このLPサイズのジャケットは実に雰囲気があった。“HERE
COMES EARL "FATHA "HINES”(JAZZ批評 44.)のRICHARD DAVIS繋がりで、新たにこのCDを購入したのだが、これこそ「昔懐かしい頬擦り盤」と言えるのだろう。
このCD、「ルビジウム・クロック・カッティングによるハイ・クオリティ・サウンド」と謳ってあるが、一部、マスターテープに起因する雑音があるものの、録音状態は極めて良い。電気的増幅に頼らない引き締まった音色が実に心地よいのだ。
RICHAD DAVIS繋がりでもう1枚紹介したいアルバムがある。1964年録音のBOOKER ERVIN(ts)
"THE SONG BOOK"(JAZZ批評 51.)がそれで、トミフラのピアノにALAN DAWSON(ds)という組み合わせだ。これも素晴らしい。 (2006.08.05)