EDOUARD BINEAU
陰影をまといながらもエスプリに富んだ味わい深いアルバムだ
その一音一音をジックリと味わいたい
"IDEAL CIRCUS"
EDOUARD BINEAU(p), GILDAS BOCLE(b), ARNAUD LECHANTRE(ds)
2004年7月 スタジオ録音 (NIGHT BIRD MUSIC - NBM 1015 2)


@"INTERFACE" HANK JONESの手になるグルーヴィでありながら哀愁のある曲。ブルース形式の24小節で構成されているようだ。先ず、テーマが良い。静かに熱く演奏するという感じ。クールでありながらホットだ。この演奏スタイルは全編に漲っており、これがBINEAUの個性といってもいいかもしれない。何回も繰り返して聴くほどに味わいの出てくる演奏だ。中盤から4ビート演奏にシフトする。
A"FREDERIQUE PART 1" ピアノ・ソロで演奏されている、謂わば、次の曲へのイントロか。
B"FREDERIQUE PART 2" ここからトリオ演奏になる。BINEAUのオリジナル。スローの8ビートで演奏されるが、クールでグルーヴィ。徐々に高揚感を増していく、その様が良い。陰影のある演奏とも言えるだろう。一音一音を味わいたい。後半からリズムもテンポも変化する。
C"WAYFARING STRANGER" ベース・ソロで始まる暗めの曲。"TRADITIONAL"とあるのでフランス民謡か?

D"ANGEL EYES" ベースの定型パターンでイントロが始まり、おなじみのスタンダード・ナンバーのメロディが流れる。さびの部分では4ビートが刻まれる。そのバランスの良さで聴くものを飽きさせない。変幻自在に変化するリズムも聴き所。かと言って、アレンジに懲りすぎという印象はない。ごく自然な流れの中で展開されているから嫌味にならない。
E"SAD INSIDE" BINEAUのオリジナル。静から動へと高揚感を増していく。

F"BESAME MUCHO" この「ベサメ・ムーチョ」は良いね。美しさとエスプリが溢れている。きちんと躍動感もあるので、知らぬうちに指を鳴らしている。音数少な目のシングルトーンでも説得力がある。この演奏を聴いて思わずGONZALO RUBALCABA "BLESSING"(JAZZ批評 99.)を取り出して聴き比べてみた。これも甲乙点け難いので、興味のある方は是非、聴き比べて頂きたい。
G"SHURMA" 
H"IDEAL CIRCUS" 
タイトル曲にもなっているBINEAUのオリジナル。
I"VERTIGO" 
静かなピアノ・ソロと思ったら、そのまま、Jに流れ込む。
J"DOC GROOVY & MR RIDE" 
変拍子でテーマは始まるが、突然、ベースが4ビートを刻み、ピアノがシングルトーンでグルーヴィにスウィング。
K"SAD LISA" 
ベースがテーマをとる。GIOVANNI MIRABASSIにも通ずる美しさと品位のある演奏。

このトリオはフランスのグループだという。ベースのBOCLEの名前はどこかで聞いたことがあると思ったら、GIOVANNI MIRABASSIとの最新作(JAZZ批評 307.)で共演していた。BINEAUのジャズの志向性にも共通点が伺える。知的な美しさに支えられたジャズでもある。
アメリカのJAZZ(例えば、JAZZ批評 313.)とは対極にあり、陰影をまといながらもエスプリに富んだ味わい深いアルバムだ。その変幻自在に変化するリズム、テンポ、一音一音をジックリと味わいたい。新しい年に幸先良く 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しよう。   (2006.01.04)



独断的JAZZ批評 314.