HORACE PARLAN
ピアノトリオというのは3人の力量が拮抗していて
丁々発止のインタープレイが楽しめないと満足感が湧いてこない
"RELAXIN' WITH HORACE"
HORACE PARLAN(p), JESPER LUNDGAARD(b), ED THIGPEN(ds)
2003年12月 HORACE PARLANの自宅にて録音 (STUNT RECORDS STUCD 04102) 

率直に言うと、かつてのPARLANを聴いたことのある人間にとってはちょっぴり悲しいアルバムだ。
JAZZ批評 115.の"US THREE"の録音が1960年。PARLANは1931年生まれらしいので当時、29歳。"US THREE"はGEORGE TUCKERというベーシストを得てPARLANの無骨なピアノ・タッチがより活かされていた。TUCKERの強靭なピチカートに裏づけされたドライブ感が満載だった。無骨なピアノと強靭なピチカートが一対のものになっていたように思う。
あれから、44年の歳月が経っており、PARLANは今年73歳ということになる。誰しも年老いていくものだが、この変わり様は円熟味を増したというのとは違う。単にピアノが思うように弾けなくなったということだろう。
PARLANの自宅で録音されたようだが、"RELAXIN'"というのとも違う。気の抜けたビールのようだ。PARLANは小さい時に患った小児麻痺の影響で右手が不自由になったと聞く。この右手がPARLANの特徴とも言え、無骨で骨太な印象を与えたものだった。しかし、今は思うに任せない状態にあるのではないか?
このレビューを書くために5回ほどフルに聴いているが、これが結構苦痛なのだ。ベースの名手、JESPER LUNDGAARDをもってしても、ドラムスの名手、ED THIGPENをもってしても、最後まで盛り上がることはなかった。

@"LIKE SOMEONE IN LOVE" 1曲目としては無難な立ち上がり。期待感も湧いてくるというものだが・・・。
A"DON'T TAKE YOUR LOVE FROM ME" そろそろ変調気味になってきた。
B"THINKING OF YOU" 
C"THEME FOR ERNIE" 冗漫な感じ。
D"FOR HEAVENS SAKE" JAZZ批評 16.のKENNY BARRONとCHARLIE HADENのデュオと聞き比べるとドラムレスながらBARRONの方が濃密だ。

E"EVERYTHING HAPPENS TO ME" 
F"LOVE AND PEACE" 
G"EVERYTIME WE SAY GOODBYE" 指がもたつく。
H"BLUES FOR HP" やはりこういうブルースの方が歌ものよりもビシッと決まってる。
I"NOBODY KNOWS YOU WHEN YOU ARE DOWN AND OUT" 

サイド・メンの二人を確認して購入したのであるが、やはり、ピアノが・・・。
それと、同じような曲想のスタンダード・ナンバーが集まっているのも脚を引っ張る結果になっているかもしれない。
70歳を超えるピアニストはジャズ界には五万と居るし、元気はつらつで現役バリバリのピアニストも多い。PARLANの場合は少し「枯れて」しまった印象を否めない。やはり、ピアノトリオというのは3人の力量が拮抗していて丁々発止のインタープレイが楽しめないと満足感が湧いてこない。   (2004.12.15)



独断的JAZZ批評 235.