BEETSファンならずとも食指を伸ばしたくなる1枚
"FIRST DATE"
PETER BEETS(p), MARIUS BEETS(b), JEFF HAMILTON(ds)
1996年5月 スタジオ録音 (MAXANTER RECORDS STS digital 611131)

PETER BEETSといえばヨーロッパ人でありながらアメリカン・フィーリングを持った期待の新人で、最近作では2002年録音のベースにLARRY GRENADIERとドラムスにWILLIE JONES Vを迎えた"PAGE TWO"(JAZZ批評 133.)が素晴らしかった。更に遡ると2001年録音の"NEWYORK TRIO"(JAZZ批評 63.)がある。実は、僕はそのアルバムこそがデビューアルバムだと思っていた。
今回、このアルバムを手に入れてみて初めて1996年の録音であることを知った。前々作を遡ること5年も前にこんな素晴らしいアルバムを録音しているとは驚きであった。しかも文句なしに内容が良い。これはお奨めだ。ジャズって楽しいなと思わせる好アルバム。

                
@"BLUES FOR THE DATE" そう、一発目からこういうブルースを演られるとウキウキ・ワクワクしてくるな。
A"TRICOTISM" O.PETTIFORDがベースのために書いた32小節の歌もの。ピアノとユニゾンでテーマを弾くが、曲自身がとても良い。ウォーキング・ベースが良く歌っていて、実に快い。MARIUS BEETSはPETERのお兄さんのようだが、ビート感もあるし良く歌うのでこれは良いベーシストだ。JEFF HAMILTONといえばブラッシュという定評があるそうだが、ご多分に漏れず軽快なブラッシュワークを披露している。

B"BEBOP" これまた最高のノリとスウィング感で圧倒するアップテンポの曲。ビシビシと締りの良い演奏。 HAMILTONのスティックによるドラミングも素晴らしい。
C"CON ALMA" D.GILLESPIEの名曲。このアルバムではこの曲のほかにBとFが同じGILLESPIEの手になる曲。選曲からしてバップ志向ということが分かる。
D"IT HAS HAPPENED" 前述の"PAGE TWO"でも演奏されているBEETSの手になるワルツ。この二つの演奏の聴き比べも面白いかも。このアルバムの方が繊細で叙情的な印象。ベースの差と言っても良いかも。この辺は好みの問題だが、甲乙つけがたい演奏でもある。

E"DEGAGE" これもBEETSのオリジナル。まっ、こういう曲が書けるということ自体がこのピアニストの存在感を示している。ブルージーな土臭い曲。ベースとドラムスのバランスも良くて、ついつい指が鳴ってしまう。HAMILTONのブラッシュ・ワークもスティック・ワークも素晴らしい。
F"GROOVIN' HIGH" これもGILLESPIEの名曲。ブラッシュ〜スティック・ワークとウォーキング・ベースに乗ってピアノが歌う。
G"FIRST SONG"
 CHARLIE HADENの同名曲とは関係ない。BEETSのオリジナル。アップテンポでグイグイと引っ張り込んでくれる。

どの曲とってみても心地よいベースのウォーキングとドラミングにのって、ピアノのスイング感に満ち溢れた演奏が聴ける。3者の感性が単なる1+1+1=3に終わらず4にも5にも昇華している好例だ。前作"PAGE TWO"にも勝るとも劣らない好演盤だ。BEETSファンならずとも食指を伸ばしたくなる1枚。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しよう。   (2004.03.10)



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PETER BEETS

独断的JAZZ批評 182.