叙情的とか耽美的といわれたBILL EVANSのピアノが
本当にそうであるかを確認するには
このアルバムは最適かもしれない
"PORTRAIT IN JAZZ"
BILL EVANS(p), SCOTT LaFARO(b), PAUL MOTIAN(ds)
1959年12月スタジオ録音(RIVERSIDE VICJ-23516)

かつて、ハードバップ全盛の1950年代後半から60年前半にかけては、確かに、EVANSの演奏はリリカルに聞こえたかもしれない。しかし、現代のピアノ・トリオに照らしてみるとそうとばかりは言い切れない。特に最近のヨーロッパのジャズと比較すれば甘さはない。スウィンギーでありドライブ感も強い。現代に至ってもリリシズムの代名詞みたいに言われるのは墓場のEVANSにとっても迷惑だろう。

EVANSの指から繰り出される一つ一つの音は粒立ちのくっきりした良い音だ。そして、録音から45年経っても色褪せない密度の高いこのトリオの演奏は、100年経ってもピアノ・トリオの目標となっているに違いない。
三位一体のトリオといわれたLaFAROとMOTIANとのコンビネーションはこの時から61年の7月、LaFAROが不慮の交通事故死に遭うまで(その10日前の演奏が"WALTZ FOR DEBBY" JAZZ批評 17.)研ぎ澄まされていくことになる。

@"COME RAIN OR COME SHINE" 
A"AUTUMN LEAVES (take 1) この曲におけるピアノ・トリオの定番としてあげられるのがこの演奏。ホーンが入った演奏ではJAZZ批評 145.のMILES〜CANNONBALLの演奏が代表格。 LaFAROとの絶妙なインタープレイが緊張感と躍動感を醸成していく。テーマの後のベース・ソロからピアノ、ドラムスとのインタープレイ、更には、その後に続く3者の4ビートのアドリブにはジャズが決して失ってはならない緊張感と躍動感が横溢している。
B"AUTUMN LEAVES (take 2) 

C"WITCHCRAFT" ミディアム・テンポの軽快な演奏。
D"WHEN I FALL IN LOVE" 
E"PERI'S SCOPE" これもミディアム・テンポを楽しそうに演奏している。LaFAROのウォーキング・ベースがご機嫌!
F"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" アップ・テンポでスウィンギー。
G"SPRING IS HERE" 
H"SOME DAY MY PRINCE WILL COME" EVANSの定番。リリシズムどころか明るくドライブ感に溢れた演奏になっている。

I"BLUE IN GREEN (take 3) MILESとEVANSの競作とされている名曲。この録音より9ヶ月早い1959年3月に録音されたMILES DAVISの名盤"KIND OF BLUE"(JAZZ批評 70.)の中でも聞くことが出来る。この曲とて甘さだけに流されていないことがお分かりいただけると思う。
J"BLUE IN GREEN (take 2) 

叙情的とか耽美的といわれたBILL EVANSのピアノが本当にそうであるかを確認するにはこのアルバムは最適かもしれない。"AUTUMN LEAVES"と"SOME DAY MY PRINCE WILL COME"のほかにもC、EやFも並外れたドライブ感や絶妙のインタープレイを楽しむことが出来るはずだ。とくとお聴きあれ!
やはり、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しなければならないアルバムでしょう。
(2003.08.17)




.
BILL EVANS

独断的JAZZ批評 148.