ピアノとベースのコンビネーションに比べて、
ドラムスが浮いている

"LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD"
FRED HERSCH(p), DREW GRESS(b), NASHEET WAITS(ds)
2002年ライヴ録音(PALMETTO RECORDS PM 2088)

前ページで紹介したAANDERUD TRIOと同時に購入した1枚。
かなり曲者的雰囲気を醸し出している。ライヴ録音も手伝って、その辺、遠慮がない。それと、選曲されたテーマに「泥臭い」曲が多い。一筋縄ではいかない感じだ。MONKやWAYNE SHORTERの曲が入っていることをみれば納得がいく。それを覚悟して購入すべきだろう。多分「いいなあ」という人より「これはちょっと」という人の数のほうが多いだろう。一般受けはしないと思う。

概して、VILLAGE VANGUARDのライヴ録音というのは音が良くないしバランスも良くない。何故か音が荒い。緻密さに欠ける。以前に紹介したJACKY TERRASSONやBRAD MEHLDAUにもVILLAGE VANGUARDでのライヴ録音盤があるけど、どちらも音の荒っぽさが耳についてしまう。ドラムスの音が強調されてしまうのが欠点だ。

@"BEMSHA SWING" いかにもMONKの作ったとぼけた(?)曲。
A"AT THE CLOSE OF THE DAY" HERSCHのミディアム・スローの美しいオリジナル。だけど印象が薄い。
B"PHANTOM OF THE BOPERA" ここではベースのDREWが力強いウォーキングを刻む。でも、トリオとしてのバランスは今ひとつ。

C"ENDLESS STARS" これもHERSCHの美しいオリジナル。こういう美しい曲もあるのだが、何故か引き立たない。録音の粗さとドラムスのデリカシイのなさが影響してるのかも。
D"SWAMP THANG" これも相当、泥臭いテーマ。MONKばり。
E"STUTTERING" おどけた調子の曲の上に、ドラムスが気ぜわしくて安定感がないのでイラつく。
F"SOME OTHER TIME" これも美しい曲。しかし、ドラムスがブラッシュワークなので安心して聴ける。

G"DAYS GONE BY" HERSCHのオリジナル。この曲は躍動感もあって、GOODだ。
H"MIYAKO/BLACK NILE" 後半、長〜いドラムソロが延々と続く。13分以上の長尺もの。
I"I'LL BE SEEING YOU" BRAD MEHLDAUもこのVILLAGE VANGUARDのライヴ盤(1999年録音 JAZZ批評 128.)で演奏している佳曲。聴き比べるとやっぱりBRADの演奏のほうがいいね。

VILLAGE VANGUARDというのはドラムスにとっては鬼門だ。総じて、音が強調されてがさつな印象を免れない。
このトリオの場合、ピアノとベースのコンビネーションに比べて、ドラムスが浮いている。グループとしては部分、部分でキラッと光る部分もあるし、美しい曲も何曲か配置されているのだが、そういった良いところが潰されている。今度はじっくりとスタジオ録音のこのトリオを聴いてみたいと思った。
(2003.03.21)



FRED HERSCH

独断的JAZZ批評 127.