LEON PAKERの切れ味鋭いドラミングなくして
このアルバムはなかった
"JACKY TERRASSON"
JACKY TERRASSON(p), UGONNA OKEGWO(b), LEON PARKER(ds)
1994年スタジオ録音(BLUE NOTE CDP 7243 8 29351 2 4)

前掲のLARS JANSSON(JAZZ批評 106.)とは好対照。個性が強いというか、灰汁が強いというか。素直に真っ直ぐではない。太鼓のLEONPARKERの参加もそれに一層の香辛料を効かせている。変幻自在、自由奔放の演奏を展開している反面、結構アレンジにも凝っている。それが好きか嫌いか、面白いと思うか詰まらないと思うか。

極めつけがD"BYE BYE BLACKBIRD"。ミディアム・テンポの4ビートで始まり、LEONのドラミングに触発されてどんどんテンションが上がっていく。すると突然、テンポ無視のアップ・テンポに徐々に変化していく。これは意識的なスピード・アップとしか思えないが、それが最高潮に達すると、今度は逆に徐々にスロー・ダウンして終わる。兎に角、LEONのドラミングが最高!切れ味鋭いシンバリングは特筆もの。はっきり言って、僕はこういうドラミングに弱い。痺れる!

そうかと思うと一転してF"I FALL IN LOVE TOO EASILY"のように美しいスタンダード・ナンバーを実に瑞々しく歌う。ピアノとベースのデュオ。目を閉じて聴き入りたい。

@"I LOVE PARIS" 凝ったアレンジになっているが切れの良い演奏は聴きもの。LEONのベース・ドラムとOKEGWOのベースがユニゾンになって演奏される部分が印象的。
A"JUST A BLUES" ミディアム・スローのブルース・フィーリングたっぷりのブルース。この曲での歌い方からして、アレンジに凝らなくても充分やっていける実力はありそうだ。
B"MY FUNNY VALENTINE" テーマとは打って変わってテンションの高いアドリブが終わると静かなテーマに戻る。ベースが打楽器的な役割を演じているのが面白い。

E"HE GOES ON A TRIP" TERRASSONのオリジナル。TERRASSONのピアノもLEONのドラムスに引けを取らないくらい歯切れが良い。アドリブでの4ビートはご機嫌な演奏。一杯、アルコールでも入っていれば指のひとつも鳴らしたくなるというものだ。
G"TIME AFTER TIME" これもご機嫌にしてくれる演奏。ブラッシュ・ワークからスティックに持ち替えると楽しいノリノリの4ビートが展開される。変にアレンジに凝らないでこのようにストレートに演奏した方が楽しさ倍増なのだけど・・・。
H"FOR ONCE IN MY LIFE" テーマのアレンジに凝ったけど、アドリブは超速4ビート。LEONのドラミングがここでも光を放つ。
I"WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE" スロー・バラード。「スーッシュ」と刻むブラッシュ・ワークと長めのベース・ソロが聴ける。

強烈な印象を与える@やDに耳を奪われてしまうが、僕のお勧めはストレートに演奏したEとG。

TERRASSONのピアノも歯切れの良さが身上だ。LEON PAKERという相棒を迎えてその良さが際立った。LEONの参加なくして、このアルバムの成功はなかった。それほどシンバリング、ブラッシュ・ワーク等全てのドラミングの切れ味が鋭い。
あたかも、LEONのリーダー・アルバムの如し。  (2002.10.29)



JACKY TERRASSON

独断的JAZZ批評 107.