独断的JAZZ批評 949.

CLAUDIO FILIPPINI TRIO
変幻自在の演奏スタイルの変更も3者の阿吽の呼吸があればこそ
"SQUARING THE CIRCLE"
CLAUDIO FILIPPINI(p), LUCA BULGARELLI(b), MARCELLO DI LEONARDO(ds)
2013年10月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7888-2)

CLAUDIO FILIPPINIのピアノ・トリオ・アルバムはデビュー・アルバムの"THE ENCHANTED GARDEN"(JAZZ批評 759.)が何と言っても素晴らしく、若きイタリア・ピアニストの才気を感じさせるに十分なアルバムであった。その後、ベースにPALLE DANIELSSONを迎えて2枚ほど連チャンでリリースしている。が、2枚目は「売れ線狙い」で来たかと思わる美メロ路線に大きく舵を切っている。
その反省があったのだろうか?本アルバムは原点に戻って"THE ENCHANTED GARDEN"と全く同じメンバーで構成されている。
演奏曲目はジャズのスタンダードと言われる有名曲ばかり。
タイトルの"SQUARING THE CIRCLE"は「不可能に挑戦すること」という意味があるそうだ。

@"IMPRESSIONS" 最初のベースのイントロを聴いて、これだよ!と思った。箱鳴りのする実に良い音色だ。力強さもある。J. COLTRANEの"IMPRESSIONNNS"ってこんな曲だったけ?と思わせる哀愁とリリシズム溢れる演奏に変貌している。バックに流れるシンセが効果的。終盤ではCOLTRANEの十八番"MY FAVORITE THINGS"のメロディが何気なく挿入されている。
A"AUTUMN LEAVES" 
抽象画風的インタープレイからインテンポにシフトする。唸りをあげて猛進するベースのウォーキングがいいね。最後の最後に「枯葉」のフレーズがわずかばかり入る。
B"'ROUND MIDNIGHT" 
T. MONKの名曲もこんな風にアレンジされたのか!と草葉の陰でびっくりしているだろう!シンセサイザーや効果音を多用している。この辺は好みの分かれるところだろう。
C"I DID'T KNOW WHAT TIME IT WAS" 
ストレートな演奏だけど、FILIPPINIのアドリブでのセンスの良さが光る。指でも鳴らせば最高さ!
D"MOON RIVER" 
これも奇を衒わないストレートなバラード演奏。何気にセンスの良さが滲み出ている。
E"STOLEN MOMENTS" 
こう来たか!まさかの多ビート。
F"JITTERBUG WALTZ" 
ピアノのイントロで始まる。躍動感、緊密感とも申し分なし。BULGARELLIの素晴らしいベース・ワークも聴きどころ。エンディングも小洒落ていて楽しい。
G"A NIGHT IN TUNISIA" 
こういうベタな曲が入っているのも面白い。変幻自在に演奏をシフトできるのも長年培ったの緊密感の成せる技だろう。
H"WHAT A WONDERFUL WORLD"
 ベースがテーマを執る。正確な運指から生まれる正確な音程。実に心地よい。

調べたら、本アルバムは前アルバムからわずか半年で録音されたものだった。前アルバムの保守性の猛省から早まったのだろうか?
若いミュージシャンからチャレンジ精神を奪ったら駄目だね。「不可能に挑戦する」はオーバーにしても、果敢にスタンダードにチャレンジしたのは評価できる。
元の鞘に納まった3人の躍動感、緊密感、一体感は申し分ない。変幻自在の演奏スタイルの変更も3者の阿吽の呼吸があればこそということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.07.29)

試聴サイト:http://www.camjazz.com/home/8052405141682-squaring-the-circle-cd.html



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