独断的JAZZ批評 916.

DAYNA STEPHENS
個を殺して、アンサンブルに徹している
"PEACE"
DAYNA STEPHENS(bs, ts, ss), BRAD MEHLDAU(p), JULIAN LAGE(g), LARRY GRENADIER(b), ERIC HARLAND(ds)
2014年11月リリース スタジオ録音 (SUNNYSIDE : SSC 1399)


DAYNA STEPHENSは初めて聴く。
そして、本アルバムはバラード集だ。
錚々たるメンバーをみて驚いた。しかも、曲によって編成を変えている。デュオからクインテットまである。当のSTEPHENSは曲によってバリトン、テナーとソプラノ・サックスを持ち替えている。バリトンでは太く逞しく、ソプラノでは優しく切なげに奏でている。
結論から先に言えば、これは素晴らしいアルバムだ。得てして、錚々たるメンバーを集めたアルバムというのは、顔見世興行的なものもあったりしてちょっと心配したが、その懸念は杞憂に終わった。メンバーのひとりひとりが素晴らしい仕事をこなしている。

@"PEACE"(ts+p+b+ds) "PEACE"数あれど、これはH. SILVERの書いた曲。MEHLDAUのピアノは抑え気味というか、控え目ではある。 
A"I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO"
(bs+p+b+ds) 言わずと知れた「思い出のサンフランシスコ」 バリトン・サックスの音色を存分に堪能いただきたい。 
B"ZINGARO"
(ts+p+g+b+ds) JOBIMの曲らしい。ここではMEHLDAUのピアノが熱くていいね!"DAY IS DONE"(JAZZ批評 301.)の頃の演奏を彷彿とさせる。と思いきや、何とフェード・アウト!なんてバカなことを! 
C"THE GOOD LIFE"
(ts+g+b) 先日、GEORGE ROBERTの同名タイトルのアルバム(JAZZ批評 902.)を紹介したばかりだが、ここではLAGEとGRENADIERの演奏に耳を傾けたい。どちらも素晴らしい音色で鳴っている。
D"THE DUKE"
(bs+g+b+ds) ミディアム・テンポの4ビートを刻んでグイグイ進む。指でも鳴らせばご機嫌になれる。
E"BROTHERS"
(ss+p+g+b) 今度はソプラノに持ち替えている。優しくも艶のある音色が心に沁みる。
F"DEBORAH'S THEME (FROM ONCE UPON A TIME IN AMERICA)"
(ts+p+g+b) ENNIO MORRICONEの曲。ベースのアルコ奏法が効果的。テナー以外は脇役に徹している。
G"OBLIVION"
(ss+g+b+ds) 泣かせるなあ!泣かすためにあるようなトラック。LAGEのギターが素晴らしい!初めてこのプレイヤーの素晴らしさに納得がいった。
H"BODY & SOUL"
(bs+b+ds) ハーモニー楽器が入っていないのに、こういう聞古されたバラードを演奏するというのは難しかったろう。
I"TWO FOR THE ROAD"
(ts+g+b+ds) HENRY MANCINIの書いた名曲。PAT METHENYが"BEYOND THE MISSOURI SKY"(ジャズ批評 686.)の中でも演奏している。併せて聴いてもらいたいアルバムだ。
J"MOONGLOW"
(bs+b) バリトンとベースのデュオというのも珍しい。デュオでも様になってしまうところが凄い!流石のGRENADIER!

本アルバムは曲ごとにフォーマットを変えて、デュオからクインテットまであるのだが、全ての演奏がDAYNA STEPHENS、その人のためにある。STEPHENS以外は皆、脇役に徹しているのだ。MEHLDAUやHARLANDでさえも引き立て役に回っている。個を殺して、アンサンブルに徹しているのだが、これはこれでまた素晴らしいということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した
録音も素晴らしく、アコースティックな良い音色だ。オーディオ・ファンにもお勧めしたい。   (2015.01.17)

試聴サイト:https://soundcloud.com/mattpiersonmusic/sets/dayna-stephens-peace





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