独断的JAZZ批評 881.

ART PEPPER
耳がリズム陣に向いてしまうというのも皮肉なことだ
"ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION"
ART PEPPER(as), RED GARLAND(p), PAUL CHAMBERS(b),
PHILLY JOE JONES(ds) 
1957年1月 スタジオ録音 (CONTEMPORARY RECORDS : 0025218633826)


アブストラクトを聴いた後はオーソドックスな4ビート・ジャズが聴きたくなる。そういうときのために在庫にとっておいたのが本アルバム。
"THE RHYTHM SECTION"というのは、言わずもがなだが、MILES DAVIS QUINTETのリズム陣。1950年代後半のメンバーだ。録音は1957年で、MILES DAVISがプレスティッジ4部作("WORKIN'", "STEAMIN'", "RELAXIN'", "COOKIN'")をたった二日間で録音した、いわゆる、マラソンセッションの翌年だ。
このMILESのリズム・セクションをお借りして録音されたのが本アルバム。史上最強のリズム・セクションと誉れの高いリズム陣とART PEPPERとの邂逅。

@"YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO" 何と言ってもこの曲が聴きたくてゲットしたアルバムだ。PEPPERのアルトは滑らかだけど少し線が細い音色だ。高音部なんかはクラリネットの音色に近いかもしれない。盤石なリズムに乗ってご機嫌なスイング感で歌っている。GARLANDはガーランド節で応えてくれるし、CHAMBERSは太くて逞しい音色で歌い上げるし、JONESは分かり易いドラム・ソロを披露してくれるし、言うことないね!
A"RED PEPPER BLUES" 
昔はこういう分かり易いブルースが多かったけど、最近のブルースは難しくなるばかりだ。
B"IMAGINATION" 
こういう曲を聴いていると「良かかりし時代の良かかりしジャズ」って気がするんだなあ!まさに、ノスタルジックな演奏だ。
C"WALTZ ME BLUES" 
珍しいなあ!ワルツだけどちゃんとブルースになっている。
D"STRAIGHT LIFE" 
高速アップ・テンポでグイグイ進む。GARLANDのコロコロ転がるピアノにCHAMBERSのアルコ弾きとドラムスとの8小節交換も加わって楽しげに終わる。
E"JAZZ ME BLUES" 
F"TIN TIN DEO" 
JONESの叩きだすラテン・リズムに乗って楽しげだ。
G"STAR EYES" 
先日紹介したMIKE DiRUBBOの"FOUR HANDS, ONE HEART"(JAZZ批評 879.)でも演奏されていた。音色を聴き比べてみるのも面白い。僕の好みを言えば、DiRUBBOの音色の方が艶があって好きだなあ!
H"BIRKS WORKS"
 これも分かり易いブルース。こういうブルースをやらせるとこのリズム・セクションは天下一品だね。アンサンブルが良い上に、自分たちの主張をしっかり入れることも忘れていない。

史上最高のリズム・セクションと謳われたGARLAND, CAHMBERS, JONES のリズム陣は盤石だ。そのリズム陣を「借りて」レコーディングできたのはPEPPERにとっても至福の時だったに違いない?
そうは言っても、耳がリズム陣に向いてしまうというのも皮肉なことだ。「こんなはずじゃなかった!」とPEPPERが言ったかどうかは分からない。   (2014.06.14)

試聴サイト :
 https://www.youtube.com/watch?v=xISaCzXYYg8&list=
PLvWstQhRav6t4s_8qedpfdyT-bYmEWZI8




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