『つぐみ』['90]
監督・脚本 市川準

 従姉の白河まりあ(中嶋朋子)が意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれで狡賢いと言う病弱な女学生山本つぐみ(牧瀬里穂)のキャラクターが性に合わず、まりあの視点で綴られる物語が彼女の独白ゆえに妙に釈然としないものが残る、なんともスッキリしない作品だったが、昨今の女性市場を狙った作品群の先駆けという点からは、当時よりも現在のほうが興行成績の上がりそうな映画だった。また、テレビドラマ『17才 -at seventeen-』で、内田有紀が男言葉で喋って人気を博する四年前に牧瀬里穂に乱暴な言葉遣いをさせていたことが目を惹いた。おそらく未読の原作小説『TUGUMI』(吉本ばなな 著)がそうなっているのだろう。

 まりあが母親と『二十四の瞳』の大石先生が松江の奉公先を訪ねる場面を観ていた序盤に出てきた映画館の銀座文化は、その名称が銀座文化2だった時分にヤング・ゼネレーションなどを観た劇場で、併設されていた銀座シネスイッチではこの当時、『デリカテッセン』『キカ』を観ている。看板だけしか映らなかった銀座シネパトスも何度も行ったことのある映画館だったので、目に留まった。

 そして、西伊豆の松崎には、この当時でもなお電飾看板に映画実演・ヌードと記された「にしな」という劇場が映っていて、木全公彦 著スクリーンの裾をめくってみればを読んで「東京では少なくも一九七三年頃には実演はあまり見られなくなったというのが通説である。だが、地方のピンク映画専門館やストリップ小屋へのドサ回りという形で実演は続けられ、逆に一九七三年頃を境に七〇年代後半までむしろ地方ならではのイベントとなる」(P74)とのことだから、一九七六年に大学進学で上京した僕は最終期を擦れ違ったことになる。と綴っていたものが、1990年になってもまだ残っていたことが判って、いささか驚いた。




参照テクスト
 『スクリーンの裾をめくってみれば』を読んで
by ヤマ

'24. 1.15. BS松竹東急よる8銀座シネマ録画



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