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『ジェロニモ』(Geronimo: An American Legend)['93] | |||||
監督 ウォルター・ヒル
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一年前の夏に録画してあったNHKスペシャル「全貌 二・二六事件~最高機密文書で迫る~」及び「昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録「拝謁記」~」を観たところだったからか、アパッチ族の戦士ジェロニモ(ウェス・ステュディ)から「ナンタンルパン」との尊称を得ていたジョージ・クルック准将(ジーン・ハックマン)の後任に就いたネルソン・マイルズが横取りしたゲイトウッド中尉(ジェイソン・パトリック)の功労は軍の正史に残っていないから、デイヴィス少尉(マット・デイモン)による覚え語りの形になっているのかもしれないと思った。 そういうことは軍隊に限らず、少し大きな組織になると、しばしば起こっていることのように思われる。さればこそ、記録というのは大事なことなのに、近年の政府の公文書の扱いは、本当にろくでもないことになっていると改めて思った。もっとも二・二六事件当時の海軍の資料を戦後に秘匿していたのは、海軍軍令部長だった富岡少将だったようだし、昭和天皇の拝謁記を残したのは、初代宮内庁長官の田島道治個人だったのではあるけれども。 秘話とされるものには、必ずなんらかの元になっているものがあるのではないかと思われるが、ゲイトウッド中尉にまつわるものは、どんなものが残っているのだろう。もっとも、原案・脚本を担ったジョン・ミリアスが造形したフィクショナルな人物なのかもしれないのだが、ジェロニモ以上にゲイトウッド中尉が目を惹く人物になっていた気がする。そして、アパッチ族ながら白人側の斥候兵になって軍曹にまで任じられながら収容所送りになっていたチャト(スティーヴ・リーヴス)と、彼を庇って賞金稼ぎとの銃撃戦で命を落としたアル・シーバー斥候隊長(ロバート・デュヴァル)の存在が効いていたように思う。 僕の母親が生まれた昭和十一年に起こった二・二六事件であれ、戦後における昭和天皇の戦争責任問題であれ、アメリカにおけるアパッチ戦争であれ、一般的には単純化した対立構造の元に図式的に認知されている事件の当事者たちに起こっていたことや事件の関係者たちにおける相互関係は、決して単純ではなかったことがよく伝わってきたように思う。 | |||||
by ヤマ '20. 8.30. BSTBS録画 | |||||
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