讃美歌54番 「よろこびの日よ」
原作者Christopher Wordsworth(1807-1885)は詩人William Wordsworthの甥である。国教会聖職の子と
してケンブリッジを優秀な成績で卒業後、母校の特別校友及び講師となり、1836年にははやくもハロー校の校長に任じられた。幾多の要職を務め、聖書、神
学、歴史等に関する多数の著書の他”The Holy Year、1862”と題する讃美歌集がありその中には自作の歌117編が含まれている。この歌は
「キリスト教の日曜日の歴史と恩恵とを述べた教訓的な歌」と言われ、英米の教会の礼拝で最も良くうたわれる歌の一つである。讃美歌には、聖書の引用個所と
して”詩篇118編24節”「今日こそ主の御業の日。今日を喜び祝い、喜び躍ろう。」とあるが、”出エジプト記二十章”の十戒の第4番目に「安息日に関す
る戒め」即ち、「七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの
町の門の中に寄留する人々も同様である。」となっている。日本の讃美歌の歌詞の中には、”日曜日”であることの記述はないが、原作には”each
Sunday”との表現がある。
この曲名は”Mendebras”となっているがその由来はわからない。
作曲者ロウエル・メイスン(Lowell Mason-1792-1872)は、全く独学で音楽を勉強し、音楽教育に力を注ぎ後にボストン音楽学校を設立
した。アメリカで最初の「音楽博士」である。メイスンは、英国におけるジョン・B・ダイクス(1823-1876)、或はそれ以上に、米国の讃美歌史上に
重要な人物である。彼の曲のスタイルは、どこまでも大衆的、民謡的且つ米国的であり欧州の曲をたくさん編曲しているが、ときには原曲の姿が判らないほどに
手を加え、これを米国的な、メイスン的な姿に変えてしまった。それが米国人の好みにぴったり合致し全米に広がる要因ともなった。
この曲も原曲はドイツの古い民謡であった。19世紀前半、「誓い Gelubde」の曲として今日に至るまでドイツ人にひろく親しまれている歌曲である
が、原旋律はチューリンゲン地方の「森の歌 Waldlied」であったらしい。それをメイスンが編曲し、後にWordsworthの歌詞に配されてから
全米にひろく愛唱されるようになった。
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