※こちらはラクト作です。




「シ、シッティ?!どうしてここに!」
「あらソニック、ごきげんよう。」

予想だにしない訪問者に戸惑いを隠せないソニック。呆ける仲間たちを他所に一人だけ声を上げた。
その様子にエミーは客人の容姿と見比べながら怪訝な顔をしたのだった。

『後』


9月16日にこんなことがあった。

レインボーシティに天からの神々しい歌声と光が溢れた。
それは街に虹色と神の声が溢れたとも形容でき、それでいて決定的なものは誰も言葉では捉え切れずにいた。
住民は理解を超えた現象に戸惑ったものの、祝福であることだけは感じていた。
言語を超えた鮮やかな色彩で、歌声で、華やかに、神秘的に。
きっとこの街は「虹」に愛されているのだろう。
全てを覆い尽くしたその魔法について、住人たちは次第にそんな結論に落ち着いた。

何を祝したかをそのままにして。



薄く紫がかった腕輪を確かに受け取り、ヴィクトリアが席を立とうとしたときだった。

「ちょっと待って。」

用件は済み祝いの品も気持ちも受け取った。
だからもう良いだろうと思ったのに、また呼び止められたそのストレスはすぐ顔に出た。
対する彼女はそれが見えなかったかのように言葉を続ける。

「しばらく私たちを泊めて欲しいの。今回のことでほとんど魔力を使い果たしたから
 帰るに帰れないのよ。回復を待つ間だけお願いできる?」

それは依頼の形を借りた、我が侭。
果たしてそれは祝した相手に頼めることだろうか。それも悪びれる様子を一つも見せることなく。

思慮すれば当然ながら、異世界の者たちにはこちらに住み処などなく、同じく通貨も持ち合わせてはいない。
それでいて留まろうという、無計画な異邦人にはいっそ野宿をお願いしようと考えたところだった。

「でないとアナタを付け回すわよ。私の格好、こっちではヘンなんでしょ?」

たしかに迷惑な話だが、ヴィクトリアは周囲の目など意に介さない。
通常なら無視を決め込むところであるが、それでも最終的に折れた。
一番の理由は彼女の弟子の表情を見てしまったから。
それは諦めよりも救済する意味合いが強かった。


祝いにかこつけた押しかけのくせに、コーヒー代も自分で払えやしない、色々言いたいことはあった。
しかし突っかかるだけ無駄だということはもう理解した。
気まぐれでいい加減、そして行動に移しては周囲をかき乱していく。頭の上にある耳はもはや飾り。
いちいち相手していると気疲れを起こしてしまう、彼女の弟子のように。

「いつも御苦労さま」
「よしてくれ、余計悲しくなる。」

肩を落とす青年の反応は、ちょっかいを掛けたくなる面白みがあった。

案内し到着した家はたとえ彼らの世界、イヴァリースでも見ることは稀なのではないだろうか。
家に家がたくさんくっ付いている、と形容すればいいのだろうか。みょうちくりんな家が二人を迎えた。

「これがあなたの家?いくら世界が違うといってもこんな家は・・・」
「まさか、世話になっている仲間の家だ」

こんな家の主と思われるのは心外だった。いやそれではスフィア一家に対して失礼か。
肝心の、その家主の一人からはあっさり「いいんじゃねぇの。」と滞在の許しを得た。
どの道両親も賛成すると、そして言葉通り後ほど正式に許可が下りた。自分のことも含め、この家は千客万来のようである。


こうしてシッティとコスタスが滞在することになった。
その許可を得るちょっと前、客人が初めてリビングへ現れた冒頭の場面へと戻る。


「で、だれなのよこの人たち!」
「あらソニック、私たちの深~く親密なカンケイ、言ってないの?」
「師匠!」

この一言で頭へ血を上らせたエミーはピコハン片手にソニックへ詰め寄る。

アタシの知らないところで一体何してたの?!
ウソでしょ、ねぇ何とか言いなさいよ!
この人たちとどんなカンケイなのよ!

エミーが激昂したのには少なからず彼女の刺激的な服装が関係していただろう。それを基にソニックの趣味嗜好を疑っているのだ。
狭い室内、追い回すエミー、逃げるソニック、ピコハンは見境なく振り回されとても危ない。
これを止めるべく間にコスタスが入り、シッティの冗談だということを懸命に説明に掛った。
何とか理解してもらえ、彼女が暴れてこの仮住まいとなる建物を破壊する前に落ち着けることができた。
それでもソニックだけは許し難く、彼の背中に跨り拘束したままだったが。
抑えつけられつつも口だけは動かせる。彼はシッティに問う。

「結局何しに来たんだよ。」
「実はもう終えたところなのよね。」

続けて彼女から詳しい経緯を説明され、聞き終えるころには全員納得していた。
今日起きた色が重なり合う光、天からの音楽は彼女が為、して彼女の為だったのだ。

あの選曲「なかなかいいセンスしてるじゃん」と一人つぶやくソニックであった。
それを耳にしたエミーはそっと彼から体重を引き彼を解放した。

この後スフィアの両親からお泊りを許してもらって、使う部屋も本人らが気に入った場所を使っていいということになった。

さて、この先彼女の「冗談」がこれだけで済むだろうか。
思うにまだほんの序の口。ということは、だ。

「がんばってくれ」
「うぅ、どうか大人しくしていて欲しい。」

危惧するということは現実味が強いから危惧するのであって。

明くる日からも、彼女の傍若無人な振る舞いが繰り返された。
そして尻拭いをすべて弟子である彼がせざるを得ないのである。期待通り。

ある日はクリームに嘘を教え込もうとし、
ある日はシャドウを笑わせるために追い回し、
ある日はナックルズを色香で惑わし、
ある日はテイルスのコンピューターの設定を弄り、

そのフォローに毎度奔走する弟子の姿はとても健気である。

「そろそろ限界?」
「ぐ、だがそういうわけにいかない!」

テーブルに突っ伏しているコスタスを他所に、今度はスフィアの悲鳴が遠くこだました。
まぁこれでも飲んで落ち着くといい。
そう言いながらコーヒーを差し出すヴィクトリアの目は、彼にとってどこか見慣れたものがあった。


こんな調子でシッティは一週間居すわり続けた。
実は二、三日の間で十分な魔力を取り戻していたのだが、気付いたのはコスタスのみ。
それも言い知れぬ圧力を受け指摘することは叶わなかったのだ。


「あなたたちは本当、見てて退屈しないな」
「散々だよ、あの人はしゃぎ過ぎ・・・」

元の世界へ帰ろうとする師弟の顔色は対照的だ。
シッティは他の人の祝いにもまた駆けつけるから、と言ってくれたが
「お気遣いなく!」と皆が声をそろえたのには閉口したようだ。

手を振るヴィクトリア。その揺らす右腕、二重に付けた腕輪は不揃いの色をしていた。








































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帰るまでの過ごし方を「ご想像にお任せします!!」ということで任せら れちゃったんだぜ。
で、やらかしたら見事カオスに^^;

シッティを動かせてとっても楽しかったです!ほんとうにありがとうございました。
キャラ崩壊でしたらスミマセヌorz