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新しい視点・広い視野で核軍縮の前進を

NPT再検討会議へ向けてパネルディスカッション

 2月23日、核兵器廃絶地球市民集会実行委員会がパネルディスカッション「核軍縮の逆行をいかに克服するか」を開き、約130人の参加がありました。

 ICAN日本代表の川崎哲さんは、今年、発効後50年を迎えるNPT条約の再検討会議の焦点について言及。
 不平等なNPT条約は1995年に無期限延長が決まり、併せて2000年に核兵器国は第6条の義務を果たすべく核兵器廃絶の「明確な約束」をした。それが進展していない中で異なるプロセスで生まれたのが核兵器禁止条約だった。禁止条約はNPT第6条を完全履行するための法的枠組を先取り的につくりあげた。
 今年中に50か国の批准で発効させることはもちろんのこと、署名国を100以上にして世界の過半数にすることが重要。禁止条約を支える運動が市民レベルでも国家レベルでも増えていけばプレッシャーを感じた国々が第6条の義務履行に触れざるを得なくなるだろう。

 長崎大学大学院生の光岡華子さんは、戦争・被爆を身近に感じることができず運動経験もない世代がいかに核兵器廃絶を訴えていったらいいか、その思いを語りました。
 体験のない世代は、当事者でない世代同士ゆえの客観性をもちつつ主張の異なる考えに耳を傾けられるという強みがある。核保有国はなぜ核を手放そうとしないか。非人道的な核兵器になぜ日本は依存するのか。なぜ北朝鮮が核兵器を持たざるをえない状況になったのか。核兵器廃絶の後の安全保障はどうするのか。核兵器の不必要性を説得力を持って訴えるにはそんな視点や議論が必要。

 長崎大学核兵器研究センター(RECNA)の鈴木達治郎さんは、技術進歩によって戦争のスタイル・質が大きく変わり、従来の「核抑止論」は通用しなくなることを指摘しました。
 核兵器そのものの技術進歩に加え、極超音速兵器やミサイル防衛、宇宙、サイバー技術、AIなど、多様な技術の進歩により核抑止論の基盤が崩れかかっている。米国が世界をリードしてきた時代は長く続かない。科学者・技術者の社会的責任、市民社会の監視も重要になる。

 RECNAの吉田文彦さんは、古い価値観にとらわれず、被爆地の価値観を世界標準にしていこうと呼びかけました。。
 核抑止論は、裏側に潜むリスクを無視している。相手が脅威と思わないと成立しないのに軍事的な側面だけで人間を見ていない。
 時代は変わり、人間の安全保障や人権、福祉、環境を踏まえた条約を創っていかないと未来に役立たない。従来の安保論や抑止論の延長線ではなく、若い世代しかできないアプローチもふくめ、発想を切り換えて広い視点で考え市民社会からどんどん提案していこう。

(2020年2月24日)