ホームニュース一覧2014

水俣訴訟から見えてくる原発問題

 9月12日、西南学院大学で日本科学者会議第20回総合学術研究集会が開かれ、弁護士の馬奈木昭雄さんが「福島と水俣、玄海を結ぶもの」と題して基調講演。概要を紹介します。

真相究明の妨害、被害の隠ぺい

 「安全神話」「想定外」「いまただちに被害は…」のフレーズは公害関係では使い古された言葉で、デジャブのようにフクシマに現れた。
 重大被害が起きた時、国・加害企業は原因究明を妨害し、被害の隠ぺいに全力をあげる。水俣病がその典型であり、責任はうやむやにされチッソは操業を続けた。石油化学への移行が決まって生産廃止になるまで、実効性のある防止対策がとられず、第2の水俣病が発生することになった。同じことが今またフクシマで繰り返されようとしている。

わずかな補償と永久和解条項のねらい

 重大な被害が発生した場合、国・企業が真っ先に考えることはどうしたら速やかに操業を再開し、従来どおりの利潤をあげられるようになるかだ。それは何よりも「被害者を黙らせること」である。
 わずかな補償金と引き換えに「今後いっさいの要求をしない」という永久和解条項をさりげなく契約書に忍ばせる。水俣病では漁業補償契約や見舞金契約に導入された。これらは決して被害者を救済するためのものではない。いまのフクシマも再稼働を目論む国・東電から被害者を黙らせる策動がなされている。

被害は複合要因

 水俣病はチッソが垂れ流した有害物質による複合多重汚染。単なる有機水銀中毒ではない。実態は被害の中にしかない。フクシマも同様で、他の原発事故の例は参考でしかない。

本当の解決とは

 水俣病は人体被害だけではない。巨大な環境汚染による自然および人間社会、地域経済の破壊として捉えらえねばならない。住民と患者、住民同士の対立構造も生まれた。しかし患者たちは自らの救済だけなく、被害の根絶を要求した。それは加害の徹底究明であり地域再生でもある。フクシマも目指す方向は同じであろう。

憲法・最高裁を無視する官僚たち

 悪質な加害企業よりの悪いのが官僚たちだ。憲法や最高裁判決に従う気は毛頭ない。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』では支配者の資格は「嘘とわかりきっていることを平然と言って、かつそれが真実であると信じ込む能力」と指摘。まさに安倍内閣そのものだ。

原発は存在自体が憲法違反

 企業城下町には言論・思想信条の自由がない。町にばらまかれる金は国民の税金。儲けは電力会社の懐に。被害が出ても補償金は一時的に国民の税金で賄い、あとで上乗せして掠め取る電気料金で返す。せめて原発ムラの企業の重役、歴代の通産大臣、御用学者は私財をなげうつべきだ。責任追及を徹底的にという声が国民の多数となった時、原発はなくすことができる。

(2014年9月14日)