米憲兵隊が現行犯逮捕を妨害
人身事故の米兵を基地内へ一時連れ去る
日米警察が「共同逮捕」の口裏合わせ


米軍の圧力に屈して国家主権を放棄した相浦警察署

 またもや日本の主権を侵害する米兵の事件が起こされました。ほんとうに日本は法治国家なのか。そして米軍に屈した長崎県警の姿勢も問われます。

 6月3日午前0時半ごろ、佐世保市椎木町の県道で、米海軍上等兵曹、テリー・ペイス容疑者運転の乗用車が追突事故を起こしました。通行人の通報で県警相浦署員が現場に急行しましたが、上等兵曹は車から出ず事情聴取やアルコール検知を拒否したため同1時37分、業務上過失傷害容疑で現行犯逮捕されました。

 しかし署員がパトカーに乗せようとしたところ、通訳とともに訪れていた米憲兵隊が「上等兵曹は腹と鼻を打ち鼻血を出している。基地内の病院に連れていく」と主張し、パトカーのドアの前に立って上等兵曹を連行されないよう妨害し、手錠をかけられた上等兵曹を4人で守るように取り囲んで米軍の車に乗せて連れ帰りました。

 当初、相浦署は「米軍が強引に基地に連れ帰った。身柄の引き渡しを基地側に要請している」と発表しました。基地側は「治療が終わり次第、出頭させる」と説明し、手錠はその後、基地を訪れた署員に、鍵がはずされた状態で返還されたといいいます。

 これは明らかに日本の主権を侵害する公務執行妨害です。米兵は公務外中に基地外で現行犯逮捕されたのですから、日本側は身柄を継続して確保することができ、日本の病院で手当てを受けさせることもできたはずです。マスコミ報道でも「容疑者を取り囲んでの対応は公務執行妨害容疑に抵触する」「公務執行妨害にあたる」との関係者の意見を紹介しています。

 ペイス容疑者が憲兵隊に付き添われて出頭したのは、逮捕から16時間も経った午後5時過ぎでした。当然、飲酒などの事実関係も調べることができません。そして午後7時に「証拠隠滅の恐れがなくなった」として釈放され、捜査は任意捜査に切り替えられました。そして驚くべきことに相浦署は「日米地位協定に基づく合意事項により米軍と共同で逮捕した。治療のため米側が連れ帰った。問題はない」と説明を一変させたのです。
 「共同逮捕案」は米軍側から出され、県警がその圧力に屈したのです。当事者である平山博茂副署長は「米軍の警備部隊と話し合う中で、向こうが『共同逮捕だった』という認識を示し、私たちも同調した。『共同逮捕』に変わったのは、理由を後で付けたと解釈されても仕方がない」と話しています(毎日新聞)。外務省日米地位協定室も「地位協定に基づく合意事項でも『共同逮捕』のニュアンスをもつ事項はない」(毎日新聞)としています。

 二重、三重にも主権を踏みにじる米軍と、それに毅然と対処できずに言いなりの警察の姿が浮き彫りとなりました。