日本の桜

このはなさくや図鑑 日本の桜について
(桜の系統)
 サクラの仲間は、バラ科(Rosaceae)に属する樹木です。バラ科には、約100属、3000種の植物があり、全世界に分布しています。分類学的には、バラ科はサクラ亜科、ナシ亜科、バラ亜科、シモツケ亜科の4つの亜科に分けられ、日本にはいずれの亜科も分布しています。
 日本には、サクラ亜科で主要なグループのサクラ属があります。サクラ属は、落葉性で形状は高木、低木など様々です。特徴としては、葉は互生で、鋸歯があり、托葉があります。また、花は両性花で、がく片と花弁は5枚(5数花)、多数の雄しべがあり、普通、雌しべは、長い花柱となっています。
 果実は、核果で1個の種子があります。果実が食用とされるウメ、モモ、アンズなどは、桜の仲間で、200種が主として北半球の温帯に分布しています。ウメやモモ、スモモとサクラ属(Cerasus)とは果実に縦のくぼみがない、内果皮に細かい毛がない、頂芽があることなどで、分類されています。
(桜の品種について)
 一般的に桜と呼ばれているのは、バラ科サクラ属の落葉性の樹木です。サクラ属は主に北半球の温帯に広く分布しています。
 日本のサクラ亜属(ユスラウメなどを含まない))を細分して「群」として分類すると、ヤマザクラ群、エドヒガン群、マメザクラ群、チョウジザクラ群、ミヤマザクラ群となります。
 日本の山野に咲く主なサクラとしては、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラなどがあります。そして、これらの変種を合わせると、数十種以上が自生し、また、これらの種を基本に育種されている栽培品種は、600種類以上にもなります。全世界にある花を楽しむサクラのほとんどは、日本のものばかりです。
 サクラの種は、葉の鋸歯の形や、鋸歯の先端の形、葉柄の毛の有無、蜜腺、鱗片、花序の形、萼片の鋸歯の有無やその形、樹形、花期、花弁の色、形、枚数などで分類します。
花の形態(全体) 写真:オオシマザクラ 花の形態 写真:オオシマザクラ
 
(日本の桜)
 日本の桜および日本で栽培されている桜を分類(サクラ亜属)すると、次のようになります。ここでいう「群」は、学名上、「亜節」となります。
 学者によって分類の見解は違いますが、様々な学説から自身の私見を加えました。
 また、グループを代表する品種については、できるだけ「このはなさくや図鑑」から準拠しました。くわしくは、名前から選ぶを選択してご覧下さい。
★日本で栽培されている桜の分類
 藤原による私見
 Family-Subfamily-Tribe-Subtribe-Genus-Subgenus-Section-Subsection-Series-Subseries-Species-ssp. -Var.-Subvar.f.-Subf.-Cultivar
科・属・亜属名 亜節(群) 種(代表種) 種・変種・栽培品種等
バラ科
Rosaceae
サクラ属
Genus.Cerasus
サクラ亜属
Subgen.Cerasus



桜の仲間達
スモモ
 Prunus
モモ
 Amygdalus
アンズ
 Armeniaca
ウワミズザクラ
 Padus
バクチノキ
 Laurocerasus
サクラ節
Sect.Sargentiella
ヤマザクラ群 ヤマザクラ
C.jamasakura
ツクシザクラ、ワカキノサクラ、センダイヤ等
ベニヤマザクラ
C.sargentii
オウシュウサトザクラ等
カスミザクラ
C.leveilleana
アサギリザクラ、ササベザクラ、ナラノヤエザクラ等
オオシマザクラ
C.speciosa    
ウスガサネオオシマ、ヤエベニオオシマ、ジョウニオイ等
エドヒガン群 エドヒガン
C.spachiana
コシノヒガン、シダレザクラ、ベニシダレ、ソメイヨシノ等
マメザクラ群 マメザクラ
C.incisa
タカネザクラ系 タカネザクラ、チシマザクラ等
マメザクラ系 キンキマメザクラ等
チョウジザクラ群 チョウジザクラ
C.apetala
オクチョウジザクラ、ヒナギクザクラ等
カンヒザクラ群
※日本に自生しない
カンヒザクラ
C.companulata
カワヅザクラ、ツバキカンザクラ等
サトザクラ グループ
 lannesiana
  または
  serrulata
ヤマザクラ系 アラシヤマ、イチハラトラノオ等
オオシマザクラ系 イチヨウ、ウコン等
カスミザクラ系 オオタザクラ、シオガマ等
マザクラ系 シロタエ、ワシノオ等
シラユキ系 シラユキ等
ウスズミ系 ウスズミ等
シバヤマ系 シバヤマ等
エド系 エド、ヨウキヒ等
フクロクジュ系 フクロクジュ等
タカサゴ系 ベニユタカ等
ミサクラ節
Sect.Cerasus
ミザクラ群
※日本に自生しない
セイヨウミザクラ
C.avium
ハート系 ナポレオン、佐藤錦等
ビガロー系 ブラック・タータリアン等

スミノミザクラ

C.vulgaris

アマレル系
モレロ系
ミヤマザクラ節
Sect.Phyllomahaleb
ミヤマザクラ群 ミヤマザクラ
C.maximowiczii
ヤエミヤマザクラ等
ロボペタルム節
Sect.Lobopetalum
シナミザクラ群
※日本に自生しない
シナミザクラ
C.pseudocerasus
コブクザクラ、タイザンフクン等
(桜の学名について)
このはなさくや図鑑で使っている学名については、
1992年、大場秀章氏によって植物研究雑誌に発表された、(日本のサクラ属植物の学名)変更によっています。
Ohba, H. 1992. Japanese cherry trees under the genus Cerasus (Rosaceae). J. Jap. Bot. 67: 276-281.
[大場秀章. 1992. 日本のサクラ属植物の学名. 植物研究雑誌 67: 276-281.]
(学名の変更)
チョウジザクラ  Cerasus apetala (Sieb. et Zucc.) H. Ohle ex H. Ohba, comb. nov.
オクチョウジザクラ  Cerasus apetala (Sieb. et Zucc.) H. Ohle ex H. Ohba var. pilosa (Koidz.) H. Ohba, comb. nov.
マメザクラ  Cerasus incisa (Murray) Loisel.
ヤマザクラ  Cerasus jamasakura (Koidz.) H. Ohba, comb. nov.
タカネザクラ  Cerasus nipponica (Matsum.) H. Ohle ex H. Ohba, comb. nov.
チシマザクラ  Cerasus nipponica (Matsum.) H. Ohle ex H. Ohba var. kurilensis (Miyabe) H. Ohba, comb. nov.
ベニヤマザクラ  Cerasus sargentii (Rehder) H. Ohba, comb. nov.
エドヒガン Cerasus spachiana Laval. ex H. Otto f. ascendens (Makino) H. Ohba, comb. et stat. nov.
カスミザクラ  Cerasus leveilleana (Koidz.) H. Ohba, comb. nov.

広義のサクラ属(Genus.Prunus)を細分化し、桜亜属(Subgen.Cerasus)を桜属(Genus.Cerasus)とする意見によります。
(桜の樹形について)
 サクラは、一般的に高木になるものが多く、エドヒガンザクラやヤマザクラは大木になります。小高木や低木状になるものとしては、チョウジザクラ群、マメザクラ群のサクラがあげられます。
 サクラの樹形は枝が横に広がるものから、枝が斜め上にのびる特異なものもあります。
代表的な樹形と品種に分けると次のとおりです。
◎傘状  :エドヒガンザクラ、オオシマザクラ、ソメイヨシノ等
◎盃状  :カンザクラ、カンザン、フケンゾウ等
◎広卵状:カンヒザクラ、イチヨウ等
◎円柱状:アマノカワ
◎球状 :コブクザクラ等
◎枝垂状:シダレザクラ、ヤエベニシダレ等
 生育環境によって、自然樹形にならない場合もあります。

☆サクラの樹形(基本形)

枝垂樹形
品種:枝垂桜
盃樹樹形
品種:不明
円柱樹形
品種:天の川
(桜の花の変化)
 サクラは、自家不和合性であることから、自然交雑した結果、数多くの品種が誕生しました。特にサクラの品種を特徴づける、サクラの花弁数の増加は、野生の個体から発見され、現在の栽培品種につながっています。かつて野山にあった変ったサクラを、一箇所に集めて、植栽することで、その中で交雑がおこり、結果、現在のような多くの品種が誕生したと考えられます。いわば人為的な移植の仲立ちによって生じた品種が大半なのです。
 サクラの重弁化とは、雄しべが変化し、花弁化したものです。完全に花弁になっていないものを旗弁(きべん)と呼んでいます。旗弁を特徴として品種としているサクラに、ホタテやハタザクラといったものがあります。  
旗弁が生じた固体(実生)  旗弁が特徴の品種(ホタテ)
 菊咲きの花は、貫生という変異が起きて、一つの花の中にもう一つの花が重なる二段咲きになっているものです。一説には、日本海側に菊咲きの変異が多いことから、フェーン現象と因果関係があるのではといわれています。
(早咲き・遅咲き・2回咲きのサクラ)
サクラの開花も様々です。
◎早咲きのサクラ:カンザクラ、カンヒザクラ、エドヒガンザクラ、シダレザクラ等
◎遅咲きのサクラ:フケンゾウ、カンザン等(サトザクラ類)
◎かなり遅咲きのサクラ:カスミザクラ、ケンロクエンキクザクラ、ナラノヤエザクラ等
◎二度咲きのサクラ:フユザクラ、シキザクラ、ジュウガツザクラ、コブクザクラ等
(オオシマザクラについて)
  オオシマザクラは、伊豆大島に自生していることから、オオシマザクラと呼ばれています。カスミザクラの島嶼形ではないかと考えられています。三浦半島や房総半島には、薪炭材として植栽したものが野生化しています。
 また、オオシマザクラの葉は、香りがよく、大きいことから、塩漬けにして桜餅を包むのに使われています。香りの成分はクマリンと呼ばれているものです。オオシマザクラの花が咲くころ、付近を通りがかると、大変良い香りがします。ソメイヨシノにはない特徴の一つです。
 オオシマザクラは、ソメイヨシノの片親といわれており、その他のサトザクラと呼ばれている数多くのサクラの母種となっています。このサクラがなければ、これほど多くのサクラの品種が誕生しなかったのではと考えられています。